もしも雲が生命だったら

逆三角形坊や

もしも雲が生命だったら

雲は、人類よりもはるか前から地球を支配してきた、知的蒸気生命体だった。

空模様の変化は彼らの生命活動そのものであり、地球は雲のバイオリズムによって管理・統治されていたのだ。

しかし、ここでいう「管理・統治」は、人間が考えるそれとはまったく異なる。


なぜなら、彼らにとって地上の生物は、ただの「動く模様」でしかなく、生命にすらカウントされていない。

人間が雲を単なる水蒸気としてしか認識していないように、雲もまた私たちのことを「有機化合物のゆらぎ」としてしか認識していない。


ただし、この説明にもひとつ誤解がある。

雲の思考形態と、人間の思考形態はそもそも比較できないほど異なるからだ。

雲は人間のように脳という器官を使って考えるわけではなく、また人類のような群体構造を築いているわけでもない。

彼らは個体でも集合体でもなく、「グラデーションとムラのパターン」として流動的に存在している。


低気圧や高気圧、拡散や断層のような境界、雨や台風といった状態の変化によって、彼らの役割は変わる。

それは人間が、ある時は会社員になり、またある時は家族となり、消費者にもなるように、状態によって密度や配列が変わり、別の機構を形成するのと似ている。雲の生命活動も、それと同じような構造を持っている。


私たちが日々目にしている天気予報は、彼らの営みを「人間のフィルター」で解釈した二次的な現象にすぎない。

人間の行動の多くは天気によって左右される。

収穫量、休日の選択、太陽光が生む脳内ホルモンの変動、生命活動全般。それらすべてが、彼らの影響下にある。

しかし、それらは無意味な自然現象なのではなく、雲によって意図された管理・統治の結果なのだ。

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