額の傷痕

七乃はふと

額の傷痕

額の傷痕

 小学生の頃かな、あるゲームが流行ってた。

 内容はモンスターを捕まえて対戦させるもので、俺は主人公に自分の名前をつけて、友達と競い合うように遊んでいた。

 ある日リビングでゲームしていると、親父が入ってきたんだ。

 親父は、いつも静かで息子の俺から見ても大人しい人だった。

 そんな親父が、ゲームを見て声を上げるから、俺はうるさくして怒られると思ったんだけど、違ったんだよ。

 何処かで見た事あるって言うんだ。

 タイトルを言うと、やっぱりだ。懐かしいなって言いながら、隣に座ったんだ。

 俺が遊んでたのは、親父が子供の頃に発売されたシリーズの最新作だったんだって。

 食い入るように画面を見てるんだけど、その顔がキラキラしてさ。思わず一緒に遊ぶ? って誘ったんだ。躊躇ったのは最初だけ。のめり込んだ親父と二人で遊ぶようになった。そのうち同じのもう一台買って来て、対戦するようになったんだけど、先に遊んでた俺が連戦連敗するほどやりこんでた。

 俺が飽きた後も、他のシリーズ物の新品買ってきては、楽しいなぁって声に出しながら遊んでた。

 子供の頃遊ばなかったのって聞いたら、一瞬俯いて、色々嫌な事があったんだ。って言うだけだったよ。


 で、この傷が出来た日の事なんだけど。

 仕事から帰って来た親父が買い物袋を持っていたんだ。

 中には、所々傷ついた文庫本くらいの大きさのゲーム機。

 それどうしたのって聞くと、中古で見つけて買って来たらしい。

 買ってきたゲームは、親父が子供の頃遊べなかったというシリーズの初代。

 電池を入れて、起動すると、モノクロ画面。

 故障かと思ったが、笑顔の親父を見る限り正常らしい。

 で、タイトル画面からゲームを始めると、以前の所有者のセーブデータが残っていたんだ。

 主人公の名前が表示された途端、突然親父が立ち上がった。

 次の瞬間、だずん。

 ゲーム機を床に投げつけ、飛び出た電池が俺の額に直撃。

 そうして出来たのが、この額の傷。


 

 

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額の傷痕 七乃はふと @hahuto

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