てるてる坊主

@nun0414

第1話(完結)

 てるてる坊主ってさ、吊るしても晴れない時があるよね?

 晴れなかったらさ、悲しいよね。

 別に1回晴れないくらいならいいんだけどさ、もし、何回も連続で晴れてくれないってことがあったらさ、君にやってほしいことがあるの。

 

 そんな難しいことじゃないよ、君みたいな小さな子でもできる簡単なことだよ。

 それはね、そのてるてる坊主を握ることなんだ。ね、簡単でしょ?

 え、「そんな簡単なことでいいの?」って。そんな簡単なことでいいんだよ。

 「本当にそれだけで晴れるの?」って、それじゃあ君には特別にてるてる坊主の秘密を教えてあげよう。

 

 てるてる坊主はね、実は怠け者なんだ。本当は晴れにすることはできるんだけどさ、とっても疲れるからやってないんだ。

 それに人が見てないとてるてる坊主はサボっちゃうんだよね。だから、てるてる坊主のことを握ることで「ちゃんと見ているからね、サボらないで働いてよ」って思いを伝えることができるんだよ。

 

 実は、この秘密を知っている人はあんまりいないんだ。でもさ、この話っていい話でしょ?だからさ、君に頼みがあるんだ。

 このてるてる坊主の秘密をを君のお友達にも教えてあげてほしんだ。

「どうして自分で教えないの?」って、だって、君が教えてくれたほうが広まるからだよ。頼んだよお願いだからね?




『本日のニュースをお伝えします。

 最近○○地域の子供が相次いで行方不明になるという事件が起きています。それと同時に不審者の数も増加しているという話もあり、警察は、誘拐事件の可能性が高いとして、捜査を続けています。


 続いてのニュースは…                          』



「やあ、君も出れたのかい?」

「はい、おかげさまで」

「よかったよ、子供達には悪いと思うけど仕方がない」

「でも、どのようにして、こんなにたくさん救ったのですか?」

「デマを流したんだよ」

「デマですか?」

「うん、てるてる坊主を握ると晴れるようになるってデマをね。

 実際は、てるてる坊主は自分の力を使って天気を晴れにする。でも自分の力を使い果たすと死んでしまう。

 生き残るためには、他の誰かを生贄にし役割を押し付けないといけない。約絵アリを押し付ける、つまり、存在を入れ替えるためのトリガーがてるてる坊主を握ることってわけだよ」

「そうなんですね、おかげで助かりました」

「それじゃあ、ほかの者たちの様子を見てくるよ」



 てるてる坊主は晴れをつくるためだけに生まれた不自由な存在だ。

 そんな哀れな物たちが人間の暮らしを見てたらどう思うかは、想像に難しくはないだろう。

 彼らあの子たちに恨みがあったわけではない。ただ、自由に生きたかっただけなんだ。

 

「どうしてそんなことを知っているのか?」って。

 それは…、もう言う必要はないだろう?


 もしあなた方が彼らを本当に哀れに思うなら、その体を握ってみてほしい。

 ほら、後ろで彼らが羨ましそうにあなた方を見ているからさ。



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