未来予知

dobby boy

第1話

 未来予知は可能なのか?


 多くの人が、考えたことがあるはずだ。

 未来予知が出来れば、起こりえる情報を知ることで、富を得ることも出来るし、災いを避けることも出来る。


 だが、現実的に可能なのか。

 未来予知、つまり未来の情報を得るためには、過去に情報を送る必要がある。未来から過去に送られた情報は、過去の人間にとって未来の情報となるからだ。


※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/822139840823158813


 では、過去に情報を送るにはどうすればよいのか?

 アインシュタインの特殊想定性理論より、光速を超える電波であれば、過去に情報を伝えることが出来るとされている。


 現在光速を超える物体は存在しないというのが、多くの物理学者の見解ではあるのだが、先日、プラズマにレーザーを照射することで、プラズマ中の光の速度を2倍にすることが出来たとの報告があったらしい。

 この報告を根拠として、異なる周波数の電波を組み合わせて照射することで、電波の速度を光速を超えたものにすることが出来るということが書いてあるウェブサイトを見つけた。


 そのサイトによると、5Gの電波に、電子レンジの解凍モードの電波を照射することで光速越えの電波になるとのことであった。つまり、電子レンジにスマホを入れ解凍モードで起動させると同時にメール送信することで、過去にメールを投げることが出来る。勿論、電子レンジにスマホを入れて起動すればスマホは壊れる。起動直後、壊れる前にデータ送信させるのだ。


 具体的には、以下の手順だ。

 1.スマホのメールアプリに伝えたい内容を書いて、宛先を自分にして、送信できる状態にする。

 2.百均で売っているスマホ自動タップ機をスマホのメール送信ボタンを押せる位置にセットする。

 3.スマホを電子レンジに入れて、解凍温めボタンを押すと同時に、自動タップ機を起動してメール送信する。


 これを読んだときは、こんな荒唐無稽なことで過去に情報を送ることが出来るとは、到底信じられなかった。だが、好奇心に逆らうことは出来ず、携帯ショップで予備用のスマホを契約し試すことにした。


 時計を確認する。今は土曜日の17時30分。TVをつけて大相撲中継にチャンネルを合わせる。前頭筆頭 国の里と前頭三枚目 一乱の取り組みが始まるところだ。

 スマホのメール受信すると、自分からのタイトルなしメールが一件。送信日時は、今日の18時10分。本文は、「結びの一番、小結 山の岩が横綱 大海嘯を3分37秒の大相撲の末うっちゃりで破る番狂わせ」

 TVでは、一乱が国の里を上手出し投げで下していた。その後、小結 南河 対 前頭五枚目 青の波。大関 大玄 対 関脇 若赤龍 と進む。


 そして、結びの一番、横綱 大海嘯 対 小結 山の岩 が始まった。大海嘯のかちあげで上体が上がった山の岩にのど輪を決めて一気に土俵際まで追い詰める。それを見た瞬間、疑念と諦念が入り混じった感情が生じるも得俵に足をかけながら、横綱の両まわしを掴んだ山の岩に気持ちを持ち直す。


 右四つで得俵からじりじりと前進する。横綱も両まわしをつかみ、両者右相四つでがっちり組合い、山の岩の前進が止まり両者渾身の力比べに館内から万雷の拍手が巻き起こった。


 両者微動だにしないまま3分が経過。大相撲だ。

 と思った瞬間、横綱が動く。左上手投げで山の岩の巨体を時計回りにぶんまわす。も、両まわしを離さない山の岩に対して、横綱は一気の寄りで再度土俵際に追い詰める。弓のように上半身をそらす山の岩に勝負ありと思われた瞬間、反らした上半身を右方向に反転させ、横綱の上体のバランスを崩し、右下手をしならせながら腹ばいになりながら土俵下に横綱の背中に体を預けて二人で身を投げだした。


 3分37秒、決まり手 うっちゃりで山の岩の勝ち。番狂わせであった。

 結果をその目に、震える手で、スマホにメールを打つ。

 「結びの一番、小結 山の岩が横綱 大海嘯を3分37秒の大相撲の末うっちゃりで破る番狂わせ」

 スマホに自動タップ機をセットし、電子レンジに入れて、解凍モードで温め開始直後に、メール送信。電子レンジを開けて、確認するも、やはりスマホは壊れたようで、起動しない。


 箱から新しいスマホを取り出し、起動しメールを起動する。


 一件の受信。

 本文「阪神 日曜 発走時刻:14時10分 兵庫特別 9R 3連単 3-7-4 8,920円 31番人気」


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