これは悪ですか?

@RUNARINGO

第1話

自殺志願者情報サイト


殺人描写があります。苦手な人はご注意ください。



結婚してみたい。

警察官になってみたい。

医者になってみたい。

子供を産んでみたい。

戦争を経験してみたい。

学校の先生になってみたい。

車を運転してみたい。

刑務所に入ってみたい。

裁判官をやってみたい。

総理大臣になってみたい。

自殺してみたい。

一年で友達を百人作ってみたい。

エベレストに登ってみたい。

世の中の役にたってみたい。

私にはいろんなやってみたい事があった。



「”自殺志願者情報サイト”、ねえ」

ずいぶんと愉快な名前のサイトだなあ。

きっと、自殺したい人を集めて殺したりしてるんだろうな。

――これ、世の中のためだよね。

ここから応募か。えっと、

『私はBです。自殺を考えてるのですが⋯』

これでよしっと。


私は人を殺してみたい。



「おっ、いるいる。自殺志願者が」

一日でまた増えた。さて、いい感じの人は・・・

『私はBです。自殺を考えてるのですが⋯』

この人、よくね?

『どうも、相談役のAです。あなたの応募を見て――』

さぁて、楽しみだ。

これでまた、人を殺せる。



「あれ?なんか来てる」

『どうも、相談役のAです。あなたの応募を見て――』

ああ、あのサイトのね。

うーんこれ、どうしようかなあ。

『今日、〇〇公園で午後九時に会えませんか?』

唐突かなあ。でも、一応自殺志願者だし。

うん、焦ってるってことにしておこう。



『今日、〇〇公園で午後九時に会えませんか?』

ラッキー!向こうから相談してきたじゃん。

『良いですよ。会えるのを楽しみにしてますね』

少しくらい、相談に乗ってあげてからにしよう。



『良いですよ。会えるのを楽しみにしてますね』

うん。かかったね、この人。

さーてと、準備しなきゃ!


公園についたら三十くらいの男の人がいた。

「あ、Aさんですか?私は⋯」

「応募してくれたBさんですね。本日はよろしくお願いします」

「こちらこそお願いします」

「それで、Bさんはなんで自殺をしようと?」

「生きる意味を失ってしまって、それで⋯」

「それは大変でしたね⋯」

「今日はありがとうございました。では⋯⋯は?」

へえ、ナイフを人に刺すのってこんな感触なのね。

「ごめんなさいね。世の中のためだと思って、ねっ?」

「⋯ふざけんなよ、おま、え」

「あなたと一緒にはされたくないわ。それではまた」

「く、そ⋯が」

これが人を殺す、ねえ。


こんなものか。



『えー、昨日未明、神奈川県に住む三十歳男性が、公園で死んでいる状態で見つかりました。死因は多量出血と思われ、これについて警察は何者かが男性を刺したと見て、調査を行っております。なお、目撃情報はなく、犯人はいまだ逃走中とのことです。さて、次のニュースは――』


さすが、警察は早いなあ。やっぱすごいや。

憧れるなあ。


自殺したい人を殺す人を殺す。

つまり、殺人を未然に防いでるってこと。

じゃあやっぱり私、悪くないんだ。


さーて、次はどのサイトにしようかな。

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