偽々怪々

第1怪 通学路

　日常に、潜む奇怪で、不思議な話。

　私は、休みの前日は近所のBARに足をよく運ぶ事がある。

　落ち着いた雰囲気と、リーズナブルのカクテルは私の日常の疲れを癒してくれる。

　カクテルは3杯目、私は少しほろ酔い気分の時、誰かの話を聞きたくなる。

　話す事よりも聞き役に徹したい。

　10月にしてもまだ、蒸し暑い。

　私は、隣に座っている少し渋めの男性に話かける、彼も1人、スーツ姿の彼の手には、オレンジ色のお酒が見える。

　私が話をかけても彼は警戒を見せない、アルコールのせいもあるが、私には天性のひとたらしの才がある、何故か、警戒心を解く独特の間、雰囲気があるらしい。

　彼は、一瞬迷いを見せるが、アルコールが後押ししたのか、その口を開ける。

　変わった人ですね、こんなオジサンに、怖い話を聞かせてくれなんて、まぁ、別にいいですよ

　初めに言っておきますが、私には、霊感とかそんなのは一切ないですし、正直、幽霊とかも信じていません。

　貴方知ってますか、A地区のA小学校の登下校の事故率が異常に高い事。

　勿論、学校の登下校に事故が多いのは、なんとなく分かってるんですけどね。

　このA小学校の登下校の事故、人口で考えた時の割合から見ても全国でも珍しいですよ。

　あー、A小学校知ってました。

　ここから、そんな遠くないですからね。

　そうです、たしかに、あの学校の前は、通行量は多いし、抜け道にも使われてるから、事故が多いのは不思議じゃないって思いました。

　たしかに正門前の道路は、大きな道路もあって危険もありますよ。

　学校側も、先生や保護者が立ったり、生徒にも注意喚起してるんですけど、事故が多いのは正門じゃないんですよ。

　車が少ない裏門の道です。

　以外でした、あの道って１時間にも数台しか通らないんですよね、私自宅から見えるからわかるんですけど。

　ある時、何故あの道事故多いか分かってしまって、その話なんですが。

　ある日、自宅のベランダから、その道路を見てると一人のおばさんが立ってたんですよ

　どんなおばさんかって、おばさんはおばさんですよ、近所のスーパーとかにいる普通のおばさん。

　そのおばさんなんだけど、びっくりすることに急に道向かいの小学生に手招きして、大声で呼んだんだんだよ。

　こっちこっちみたいな。

　子供達って、学校とか家庭で交通安全の話を聞かされてるから、意識してるんだろうけどさ。

　急に呼ばれると、咄嗟的に動いちゃうだろうね。

　で、何が驚くかというと、そのオバサンわざわざ、車が来るタイミングで手招きしてるんだよ。

　子供もさ、正門の大通りには気をつけろって言われてるんだけど、裏門ってあんまり車通らないから、気にしないんだよね。

　でどうなったかって？

　勿論、車と子供はぶつかったんだよ。

　で、普通だったらさおばさん救急車を呼んだり、ひかれた子を助けたりするよね。

　でもね、俺見てたんだよ。

　その、おばさんさってすぐどっかに行っちゃったんだよ。

　ドライバーもさ、一瞬わかんないよね。

　気が動転してるし、オバサンがいた事とかも気づかないみたいだったんだよ。

　俺は一部始終見てたから、通報したよ。

　で、警察に聞かれたんだよ。

　どんな人かって、でも、答えようがないんだよ。

　普通の格好の普通のおばさん、もう1回見ても、俺わかんないね。

　一応、その子は軽い怪我で済んだみたいだけど。

　通報があった後に、警察か何度かパトロールしてくれたんだけど。

　半年ぐらい経ったらさ、また同じような事故が起こるのよ。

　俺は気味悪くなって、もうそこから引っ越したからどうなったかわかんないけどさ。

　今でもたまに聞くね、そこで事故がある事。

　基本的にはドライバーの脇目運転とか子供の急な飛び出しなんだろうけどさ。

　もしかしたら、あのおばさん、今でもあそこに突っ立って子供呼び込んでんのかなと思うとちょっとゾッとするよね。

　私はその話を聞いて手元にあったお酒を口に運んだ。

　そのおばさんが何でそんなことしてるかは、知らないが、ただなんとなくだが、胸の奥が少し淀んだ気がした。