【掌編】閉ざされた山荘で、見知らぬ〇体と
灰品|どんでん返し製作所
閉ざされた山荘で、見知らぬ〇体と
八月のある日。
Z県の団地で凄惨な事件が発生した。
殺されたのは、団地に住む二家族、計七人の男女。
金づちなどの鈍器で、何度も何度も殴られていた。
犯人は、未だ逃亡中。
目撃証言によれば、犯人の口元には、五センチほどの古い傷痕があったそうだ。
――そんなニュースが流れていた。
Z県、山奥にある山荘。
そこに、大学生の男女六人が、サークルの合宿で泊まっていた。
深夜二時。
山荘に大きな物音が響いた。
驚いてリビングに集まった六人は、息を呑んだ。
見知らぬ男が、床に、うつ伏せに倒れていた。
頭から血が流れ、床に、血だまりができている。
生々しい鉄の臭いが、充満していた。
ボクは、その様子を、まるで他人事のように眺めていた。
「し、死んでる……?」
「誰なんだよ、こいつ?」
「誰かに殴られた?」
「まさか、私たちの誰かが、やった……?」
犯人は、六人の中の誰か?
奇しくも、外は嵐で、山荘からは出られない。
電波はなく、通報もできない。
助けを呼ぶことは、不可能。
六人は、疑心暗鬼になりながら、真相を探ろうと試みた。
ただ――。
ボクは、ミステリ小説のような状況に、ワクワクしていた。
各人の部屋は、すべてドアが開けっ放しだった。
また、トイレや浴室のドアも、開いたままだった。
六人は、それぞれの部屋を調べた。
しかし、手がかりは見つからなかった。
唯一、地下へ続く扉だけが、開いていなかった。
なぜか、鍵が付いているわけでもないのに、六人の誰も開くことができない。
六人が離れた後で、ボクも試してみたが、やはり開けられない。
なぜだ?
六人は、最後に、リビングに倒れている男を調べた。
男の身体の下から、重そうな金づちが見つかった。
先端部分には、血が付着しており、何かを何度も叩いたような跡がある。
一人が、「こいつ」と叫んだ。
「口元に傷痕がある」
「団地で七人を殺したヤツだ!」
そのとき――。
リビングに倒れていた男が、むくりと起き上がった。
まだ生きていたのだ。
同時に、ボクの意識が、元に戻っていた。
六人はパニックに陥った。
我先にと、嵐の中へ飛び出そうとする。
だが、どうしても玄関のドアを開けられない。
ドアの取っ手を掴むことができない。
いったい、なぜ?
やがて、六人の声も姿も、ボクは認識できなくなった。
倒れていた男――つまりボクは、地下室に向かう。
今度は、扉が開いた。
取っ手を掴むことができた。
地下室から、腐臭が漂う。
ボクを殴ったのは、腐臭の発生源の一つだろう。
別に、どうでもいいことだが。
嵐の勢いが増した。
まるで、だれかの慟哭のようだった。
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