第20話:軍師、永遠の愛へ還る
一年後
「孔明さん、見てください」
ひかりが、興奮した様子で僕の元に駆け寄ってきた。
手には、世界各地からの手紙が握られている。
「世界中から、お手紙が届いています」
僕は、その手紙の束を受け取った。
アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア……世界中からだった。
「どれも、同じことが書かれています」
ひかりが、嬉しそうに言った。
「『私たちの街でも、愛の奇跡が起こっています』って」
僕は、一通の手紙を開いた。
それは、ニューヨークからの手紙だった。
『親愛なる孔明さんへ
私たちの街で、不思議なことが起こっています。
ある日突然、人々が互いを理解し、愛し合うようになったのです。
犯罪率は激減し、争いは消え、すべての人が幸せそうに暮らしています。
これは、あなたが始めた愛の革命の影響でしょうか?
感謝を込めて ニューヨーク愛の触媒グループ一同』
「すごいことになっているのですね」
サクラが、感動した様子で言った。
「ああ。愛の連鎖が、ついに世界規模になった」
僕は、窓の外を見た。
渋谷の街も、一年前とは全く違っていた。
人々の表情が明るく、互いに微笑みかけ、助け合っている。
「孔明さん」
田中さん(図書館の)が、僕に声をかけた。
「今朝のニュースを見ましたか?」
「いえ、まだ」
「世界中で、同時多発的に『愛の覚醒』が起こっているそうです。科学者たちは、『人類の意識の進化』と呼んでいます」
僕は、深く頷いた。
これは、宇宙が予告していた、魂の統合の始まりだった。
その日の夕方、カフェには、これまで以上に多くの人が集まっていた。
もはや、相談者と触媒の区別はなかった。
全員が、愛を分かち合う仲間だった。
「みなさん」
僕は、立ち上がった。
「今日、皆さんにお伝えしたいことがあります」
全員の視線が、僕に集まった。
「一年前、我々は、小さなカフェで、小さな愛の種を蒔きました。その種が、今、世界中で花を咲かせています」
拍手が起こった。
「しかし、これは、まだ始まりに過ぎません。本当の愛の完成は、これからです」
僕は、ひかりの手を取った。
「ひかりちゃん。今、世界の色は、どう見えますか?」
ひかりは、目を閉じて、集中した。
そして、驚いたような表情を浮かべた。
「すごいです……世界中の人たちの色が、同じ方向に向かって変化しています」
「どんな色に?」
「言葉では表現できない……でも、とても美しい、愛の色です」
その瞬間、カフェにいる全員が、同じビジョンを見た。
地球全体が、美しい光に包まれている。
その光は、一人一人の魂から発せられ、やがて一つの巨大な光となって、宇宙に向かって伸びていく。
「これが……」
サクラが、震え声で言った。
「魂の統合の完成です」
僕は、答えた。
その時、僕の心に、あの宇宙の声が響いた。
『孔明よ、時が来ました』
「時?」
『あなたの最後の使命です。愛の触媒から、愛そのものになる時が』
僕は、理解した。
これまで、僕は愛を伝える役割だった。
だが、今度は、僕自身が愛になる番だった。
「みなさん」
僕は、全員を見回した。
「我は、皆さんと、お別れをしなければなりません」
「え?」
みんなが、驚いた。
「我の役割は、ここで終わります。これからは、皆さん一人一人が、愛の触媒として、この世界を導いていくのです」
「でも、孔明さんがいなくなったら……」
中島さんが、不安そうに言った。
「大丈夫です」
ひかりが、力強く言った。
「孔明さんは、いなくなるわけじゃありません。愛そのものになって、いつも私たちと一緒にいてくれるんです」
僕は、ひかりの理解力に驚いた。
この子は、すべてを見通していた。
「その通りです」
僕は、微笑んだ。
「我は、皆さんの心の中で、永遠に生き続けます」
その夜、僕とサクラは、最後の時を、二人だけで過ごした。
「本当に、行ってしまうの?」
サクラが、涙を流しながら聞いた。
「肉体としての我は、消えます。しかし、愛としての我は、永遠に汝と共にいます」
僕は、サクラの手を取った。
「汝との愛が、我を愛そのものに変えてくれました。ありがとう」
「私こそ、ありがとう。孔明さんと出会えて、本当の愛を知ることができた」
僕たちは、最後の口づけを交わした。
それは、永遠の愛の誓いだった。
翌朝
僕は、カフェの屋上で、日の出を待っていた。
サクラ、ひかり、そして仲間たちが、僕の周りに集まっていた。
「始まりますね」
ひかりが、静かに言った。
「ああ」
太陽が、地平線から顔を出した。
その瞬間、僕の体が、光り始めた。
「孔明さん……」
サクラが、僕の名前を呼んだ。
「大丈夫です」
僕は、微笑んだ。
「これは、終わりではありません。新しい始まりです」
僕の体が、だんだんと透明になっていく。
そして、やがて、純粋な光となった。
その光は、カフェから街へ、街から国へ、国から世界へと広がっていった。
世界中の人々が、同時に、心の中に温かい光を感じた。
それは、孔明の愛が、すべての魂に届いた瞬間だった。
十年後
「おばあちゃん、お話して」
小さな女の子が、年老いたサクラにせがんだ。
「どんなお話?」
「孔明おじいちゃんのお話」
サクラは、優しく微笑んだ。
「そうね。昔、とても素敵な人がいたのよ」
「どんな人?」
「愛そのものになった人。その人のおかげで、世界中の人が幸せになったの」
女の子は、目を輝かせた。
「すごいね」
「そうね。そして、その人は、今でも、みんなの心の中で生きているのよ」
サクラは、空を見上げた。
雲の隙間から差し込む光が、孔明の微笑みのように見えた。
「愛してるよ、孔明さん」
サクラは、心の中で呟いた。
すると、風が優しく頬を撫でていった。
それは、孔明からの返事のようだった。
現在
世界は、完全に変わっていた。
争いは消え、憎しみは愛に変わり、すべての人が互いを理解し合っていた。
それは、一人の軍師が始めた、小さな愛の革命の結果だった。
孔明は、約束通り、愛そのものとなって、すべての魂と共にいた。
見えなくても、聞こえなくても、確実に、そこにいた。
そして、いつの日か、すべての魂が完全に統合された時、孔明は再び姿を現すだろう。
新しい宇宙の、新しい愛の物語を始めるために。
愛は、永遠である。
愛は、すべてを包み込む。
愛は、決して終わることがない。
これが、転生諸葛孔明の、最後にして最初の、真実だった。
(完)
『転生諸葛孔明』作者あとがき ~心からの感謝を~
最後までお読みいただき、ありがとうございます。🙏
この物語を通じて、皆さんの心に少しでも温かなものが残せたなら、それ以上の喜びはありません。💖
物語の始まり 💡
2年前、ふとした思いつきから書き始めました。
「諸葛孔明が現代に転生したら?」
最初は、渋谷で占い師として恋愛相談をするコメディのつもりでした。
しかし、書き進めるうちに気づきました。
これは、愛の本質を描く物語なのだと。✨
執筆の道のり 📖
第1話で水晶玉が割れた時、私の「小説の型」も崩れました。
第10話の告白、第15話の時間停止、第20話の変容……。
物語と共に、私自身も変わっていきました。
書く者から、愛を伝える者へ。🌱
キャラクターからの言葉 💭
孔明より
『私は、あなたの心の中にいる』
困った時、迷った時、心の孔明に尋ねてみてください。
愛の答えは、いつもそこにあります。🪄
サクラより
『愛することを、諦めないで』
傷ついても、裏切られても。
あなたの純粋な愛は、きっと誰かに届きます。💕
ひかりより
『みんなの魂の色は、とても美しい』
あなたはかけがえのない存在です。
その光を、忘れずに。🌈
終わりのない連鎖 🔄
この物語は完結しましたが、愛の連鎖は続きます。
誰かに優しくする、一緒に耳を傾ける、受け入れる……。
そんな瞬間が、新たな奇跡を生み出します。🌟
皆さん、ありがとうございました。
これからも、愛を信じて歩んでいきましょう。❤️
山田花子(やまだ はなこ)🪄✨
転生諸葛孔明 ~愛が最強の戦略だと、誰が決めた?~ 山田花子(やまだ はなこ)です🪄✨ @hanakoailove
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