新聞記者・真堂愛実の事件簿

神手守

第1話

 季節外れの雨で薄暗い雲が覆う中、少女は帰路につく。


 家に着くと、傘をたたみ、靴を脱ぐ。


 自分の部屋にカバンを置いて、着替えを終え、リビングに向かう。廊下の扉をあけて、中のリビングが見えると、そこには、首を吊っている少女の兄がいた。




「おにぃちゃん…。おにいちゃぁぁああん!!!」




 少女の叫び声で、私は目を覚ますと、そこは、いつもの自宅だった。




「……随分と懐かしい夢をみたな。」




 鏡の前で歯磨きをしながら、ぼーっとした頭でそんなことを考えた。




 夢の中の小さい女の子は、小さい頃の私で、そして、その前で首を吊っていたのが私の兄だ。




 兄は優秀な警察官だった。


 周りの人に気を配れて、困っているひとを助けられる人で、周りの人たちからいつも愛されていた。


 私の自慢の兄だった。


 ある日のこと、私は兄と一緒に食材を買いにスーパーに行った。そこで、偶然万引きした少女を捕まえた。


 すると、少女は「この人、痴漢です!」と叫び始めた。


 騒ぎを聞きつけ、人が集まって来たが、少女のポケットから、会計の済ませていないお菓子が出てくると、少女の訴えを信じる者はおらず、少女はやってきた警察に逮捕された。


 しかし、後日。


 その動画がネットに流されると、兄が痴漢したのではないかと噂され始めた。


 私も一緒にいたから、当然兄はそんなことしていなかったが、噂が大きくなると、警察はその噂に踊らされ、兄をクビにした。 


 兄は最後まで必死に弁解したが、その決定が覆ることはなかった。


 警察をクビになると周りの人たちの兄を見る目が変わり、疑いの目を向けるようになった。


 その目に耐えきれなくなった兄は、引きこもり、家から出なくなった。


 そして、ある日。私が学校から家に帰ると、そこには、首を吊った兄の姿があった。兄は、失意の果てに死んだのだ。


 失意の果てに自殺した兄を見て、私は悟った。


 この世は嘘と欺瞞に満ち溢れている。


 見知らぬ人たちの虚言によって、罪のない人々が、言われのない罪を着せられている。私にはそれが許せない。


 この世の真実を暴き出し、兄のような罪のない人々を助けるために私は、出版社で記者になった。




「真堂、ちょっとこい。」




 家を出て出版社に着くと、朝一番でチーフのデスクに呼び出された。




「チーフ、どうかしましたか?」




「お前、大物作家が立て続けに殺されてる事件ってしってるか?」




「はい。芥池賞や直森賞を取った大物作家たちが次々と殺されてる事件ですよね。しかも、犯人は、全員彼らの弟子の女性たちだっていうんだから変な事件ですよね。」




「その事件の被告人の女性の一人とアポが取れた。同性の方が話聞きやすいだろうし、お前が取材に行ってこい。」




「わかりました。」




「期待してるぞ。報道部のエース。」




「はい!」




「あっ!そうだ。被告人は、羊羹が好きらしいから、お土産買っていけよ。」




「は、はい!わかりました。」




 チーフから期待されていると言われて、思わず顔がほころんでしまった。


 今から、被告人に取材に行くのに浮かれている場合じゃない。気を引き締めないと。


 私は、気合を入れ直し、拘置所に向かった。


 拘置所に着くと、面会手続きをして中に入る。


 面会室の前で、ボディチェックを受ける。




「面会時間は、30分でお願いします。」




 職員に軽く説明を受けて、面会室に入る。


 面会室に入ってしばらく待っていると、中に、グレーの作業服を着た髪の長い女が入ってきた。




「吉田朱里さんですね。初めまして。私、週刊ライトの真堂と申します。今日はよろしくお願いします。」




「…よろしくお願いします。」




 吉田朱里。芥池賞作家、松田大西の弟子で、師匠の松田大西を殺害した犯人として、起訴されている。目は虚で、俯いているため、表情はよく見えない。


 これでは、とても話を聞けそうにないな。…そうだ!






「…お好きとお聞きしたので、よかったらこれどうぞ。」




 お土産の羊羹を手渡すと、受け取った吉田は、顔を綻ばせている。どうやら、警戒心を解いたように見える。さすがは、チーフ。これで話が聞きやすくなった。






「時間もないので単刀直入にお聞きします。なぜ、あなたは師匠の松田大西を殺害したのですか?」




 しばしの間沈黙が続いた。沈黙の後、吉田が口を開いた。




「それがよく覚えていないんです。」




「覚えていない?どういうことですか?」




「確かに何度作品を見せてもなかなかデビューをさせてくれなかった師匠に思うところはありましたけど、殺したいと思ったことは一度も思ったことはありませんでした。」




「なるほど…。それでは、事件の直前は何をされていたんですか?」




「師匠の書斎で本を探していました。そこにあった赤い本が妙に気になり、手に取ったことまでは覚えているんですけど…。その後の記憶がないんです。気づいた時には、私は血のついたナイフを持っていて、近くには血まみれで、倒れている師匠がいました。」




「…本当に覚えていないんですね?」




「本当です。信じてください!!」




 吉田は机を叩き、勢いよく立ち上がった。その目は、危機迫っていた。




「こら!暴れるな。」




 吉田は、職員に静止されると、力が抜けたように座りこむ。




「私が殺人をするなんて…。自分が自分じゃないみたいです。あの赤い本に呪われたとしか思えません。」






 その後も、事件について色々な質問をしたが、返ってきたのは要領のえない返事だけだった。


 30分の面会時間はあっという間に終え、私は拘置所を後にした。




「呪いの本か…。」




 吉田の話を信じるとすれば、事件直前に読んだその本が怪しい。


 本を開くと麻薬が吹き出すようにしてそれを吸って意識混濁で半狂乱状態で犯行を起こした可能性もあるけど、現実的じゃないし…。


 とはいえ、本当に呪いなんて存在するわけないし…。




「こんなの記事にできないわよ。チーフには、取材終わったら早く記事をあげるよう言われてるし、あーもうどうしよー!」






 私が途方に暮れていると、誰かが私に声をかけてきた。顔を上げると、黒いコートに黒いズボン、黒い手袋をした全身真っ黒な男が前方から歩いてきた。




「真堂ちゃん!久しぶり。やっぱり真堂ちゃんはいつ見てもかわいいね。」




「あんた相変わらずね巴…。それで、なんでオカルト雑誌のあんたが拘置所こんなところにいるのよ…。」






 この軽薄なナンパ男は巴悠一。私と同期の記者でムカつくやつだが、政治家の汚職事件や、麻薬密輸組織のアジトをすっぱ抜くなど取材能力は、超一流だ。このままうちの編集部のエース記者になると思われていたが、それがどういうわけか去年から、オカルト部に異動していた。




「真堂ちゃんが調べてるのと同じ事件を俺も調べにきたんだ。」




「は?」




「被告人の一人が取り調べで、本に呪われたって言ってたみたいでね。話を聞きにきたんだ。呪いって言ったら俺たちオカルト編集部の領分でしょ?」




「ばかばかしい。呪いなんてあるわけないじゃない!大方罪を軽くするために精神鑑定に持ち込もうと、嘘を…」




「呪いは存在するよ。」




「ふっふざけないで!!そんなものあるわけ…。」




 からかう巴に文句を言うも彼の目は真剣そのものであった。




「これから、その呪いの本を見に、亡くなった作家さんの家行くけど…。付いてくる?」




「はっ!あんたの酔狂に付き合ってられないわ。これから、この記事かかないといけないんだし。」




 私は、巴に背を向け踵を返し、その場を後にする。




「愛実ちゃんはさ。真実知りたくないの?」




 巴の言葉に思わず、私は足を止める。




「愛実ちゃんは、真実を知るために記者になったんでしょ?それなのに、調べもしないで帰るの?」




 その言葉は、真実を追い求めるために記者になった私の胸の奥深くに突き刺さり、心の奥がメラメラと燃えたのを感じた。


 ところで…。






「…あんた一体私のことどこまで知ってるの?」




「まぁ、ある程度は。なんせ俺は真堂ちゃんのことが大好きだからね。」 




「ほんと…喰えないやつ。」




 私は当時の名字とは違うし兄のことは誰にも言ったことがない。だから、どうやって知ったのかわからないけど…。うちの記者の中でも情報収集能力がピカイチの巴だ。間違いなく兄のことをしっている。




「いいわ。呪いなんてものがあるなら見せてもらおうじゃない。」




「…オッケー。それじゃあ行こうか。」




 私が巴の車に乗り込むと、車は目的地に向かって動き出した。




「何だか気味が悪いわね。」






 車が止まったのは、古びた洋館だった。壁には、ツタが絡まっていて昼間なのに、木の陰に隠れて薄暗く、どこか不気味であった。




「先に行ってるよ。」




「ちょっと待ちなさいよ。」




 先を歩く巴の後をついて行き、私は恐る恐る、洋館の中に入る。


 洋館の中は、外に比べて、こまめに掃除をしているのかとても清潔感があり、少しほっとした。




「真堂ちゃん書斎は2階だよ。」




 歩くとギシギシとなる階段を登り、2階へ行く。廊下を歩き、突き当たりの部屋に入る。そこにはたくさんの本が並んでいた。




「凄い本の量。」




 書庫にあるたくさん本に感嘆しながら眺めていると、一番上の棚にあった、赤い背表紙の本に目がとまった。


 その本は、禍々しいオーラのようなものを発していて不気味であり、それでいて、どこか引きつけるものがある。


 そうして本に惹きつけられるように、私は本に手を伸ばした。


 そうして、本を手に取ろうとした瞬間。本から黒いモヤが飛び出し、私に襲いかかってきた。


 私は慌てて逃げようとしたが驚いて腰を抜かしてしまったためその場から動くことが出来なかった。




「…っ!?」




 やられると思った次の瞬間、私の背後にいた巴が、勢いよく飛び出して、腕を振り抜いた。


 振り抜かれた腕は、急激に大きくなり、異形の形を成し、モヤを切り裂いた。




「真堂ちゃん大丈夫だった?」 


「ええ、大丈夫。助かったわ」




 巴に差し伸べられた手を掴んで、立ち上がる。




「あなたの腕こそ大丈夫なの?…それにあの黒いモヤは一体?」


「あの黒いモヤこそが呪いさ。」


「そもそも、呪いとは人の負の感情から生まれたもの。だから呪いは人の負の感情に呼応して、心に忍び込む。それで身体を呪いに操られてしまうんだ。」


「それじゃああんたのその黒い右腕はもしかして?」


「真堂ちゃんの想像通り…俺の右腕は呪われてる。京都に取材に行った時に、祠にあった変な箱触ったら、いつのまにかこうなっていた。でも安心して。体の一部が呪われただけなら、この通り制御できるんだ。」




 巴はニコニコしながら、腕を花の形にしたり大砲みたいな形にしたり自由に変形させて遊んでいる。


 結構、重い内容なのに、そう見えないのは巴が底抜けに明るいからだろう。




「あっ!ひょっとして腕の呪いを治すために、オカルト編集部に?」




「察しがいいね。そう言うこと。呪いを治すためには、呪いのことを知らなくちゃいけない。呪いみたいな眉唾物の情報を集めるためには、オカルト編集部にはピッタリでしょ。だから異動届を出したんだ。」




「それで、その腕の呪いを治す方法は、わかったの?」




「うん。それで編集部の先輩に呪いに詳しい人がいてその人によると、呪ったやつを祓えば腕が元に戻るみたいなんだけど…。どうやらこいつは俺の目当てのやつじゃなかったみたいだな。」




 巴は心なしかガッカリしているように見える。




「まぁ、呪いも消えたみたいだし、早く帰りましょうか?」




「…そうだね。」




 私たちが部屋を出ようとした次の瞬間。


 赤い本がひとりでに動き出し、窓を割って外に飛び出した。




「嘘。呪いは消えたんじゃないの?」




「どうやら、呪いがわずかに残ってたみたい。」




「ちょっと、どうするの?」




「大丈夫!腕についた呪いの残滓が、俺たちを本の所へと連れて行ってくれるみたいだから。って、ちょ、ちょっと…!」




 確かに巴の腕が何かに引っ張られているみたいに本の方に向かっている。




「ま、待って、うわぁぁぁぁ。」




 巴は腕を引っ張られていってそのまま、本に割られた窓から、落ちていった。




「巴!大丈夫!?」




「だひ…じょうぶぃ!」


 


「大丈夫そうね?」




 巴は私に向かってピースサインをしている。


 二階から落ちたので心配していたがどうやら、怪我はないようだ。


 私たちは車に乗り、本の向かった方向に進む。




 しばらく、車を走らせていると、日本橋にある昔ながらの日本家屋の前に止まった。




「この中に、本が入っていったの?」




「腕もその方向に引っ張られている感覚あるし間違いないと思うよ。」




 霊感とかそういう類いのものはないけど、確かに、家屋の中から不穏な雰囲気をビンビン感じる。




「ここから先は危険だし、愛実ちゃんは、待ってた方がいいよ。」




「嫌よ。この事件の真実を知りにここまで、来たんだから私も最後まで見届けるわ」




「…止めても無駄みたいだね。」 




「当然!」




「…けど危ないから俺から離れないでね。」




 私の顔を見て、巴は半ば諦めたような笑顔で私に忠告した。その忠告に私は無言で頷いた。話がまとまったので私たちは車を降りて家屋へと向かった。


 私は慎重に玄関の扉を開けた。中には、赤い本から出ていた黒いモヤが充満していた。


 黒いモヤが濃い方へと進む。


 一番奥の部屋まで来ると、そこには、白い髪の人がいた。やせ細り、頬がコケているため、男か女かはわからないがただ、異様な雰囲気を放っている。






「…あれも呪いなの?人じゃなくて?」


「強力な呪いは、普通の人が視認できるくらいに存在が形を成すんだ。」


「ということは?」




 異様な雰囲気に私は思わず後退りすると、床がミシッと音を立てた。


 その音で呪いは私たちに気がつき、こちらを睨んだ。


 


「ユルサナアアアイ!!!」




 私たちを見て、呪いが叫ぶと、黒いモヤが呪いの元に収束すると、一冊の黒い本ができた。






「あれはまずい!!飛ぶから俺の腕に捕まって。」




「えっ!何!?」




 私が巴の腕をがっちりと掴むと、巴は私を抱きかかえ、天井を突き破り、家屋の外に飛び出すと、こちらに向かって無数の黒い紙が飛んできた。


 すると黒い紙は、私たちの近くにくると、ドン!ドン!ドン!と連鎖的に爆発した。








 巴が爆発に気づき、私たちは、間一髪で爆発をなんとかかわした。




「…危なかった〜。」




「呪いを形状化できることから、ある程度予想してたけど…。この呪い、かなり強い。どうする?このまま車に乗って逃げる?」




「はぁー!?ここまで来て今更何言ってるの!?」




「だって…こいつは、俺の目的の呪いじゃないし、別に逃げてもかまわないだろ?」


 巴は、あっけらかんとした表情で言い放つ。




「あんたねぇ…。」




「けどまぁ、これ以上呪いのせいで人が死ぬのは気分が良くないし…。やるだけやりますか。」




 巴は私にそう言うと、戦闘態勢に入った。




「クタバレ!クタバレ!」




 呪いは暴言を書きながら黒い本に何かを書き殴るようにするとその紙を本から破り、こちらに向かって飛ばしてきた。


 すると紙は形を変え、獣のような姿になり、私たちに襲いかかってくる。




「近距離だとさっき見たいに紙が爆発する可能性ある。ここは…。」




 巴は腕を大砲に変化して、黒い玉を発射する。


 獣たちがその玉に触れると黒い玉は誘爆し、獣たちは跡形もなくなった。


 先程の攻撃が通じないとなると今度は、大きな岩をを上空に作り出した。




「コロシテヤル!コロシテヤル!!」




 岩は、隕石のように私たちの頭上へと落下して来た。


「巴…!!」




「真堂ちゃん。安心して今終わらせる。」




 巴は、腕を鋭く剣のようにそして、家屋ほどの大きさに変形させた。  




「君が殺したいほど誰かに怒りを抱いているのはわかった。けど、それなら、その人を呪うべきだ。」 




「ゲシ?」




「関係ない人を呪ってその人に誰かを殺させるってのは筋違いってもんさ。君は他者を巻き込みすぎた。だから、俺は君を祓うよ。」


 


「ハァアアアア!!」




「ギャァァアア!!」


 


 巴は大きい岩もろとも呪いを真っ二つに断ち切った。




「呪いよ。安らかに眠れ…。」




 呪いは跡形もなく消え去った。


 しかし、巴のさっきの攻撃ですっかり家屋は倒壊していた。




「これ、どうするの?」




「どうするって…。言ったって。」


 


 とても直せそうにないので二人とも笑うしかなかった。




「後で、業者呼んで直しましょうか。」


「そうね…。…?」


 修理代が幾らかかるのか分からず、呆然と立ち尽くしていると、私は倒壊した家屋の隙間から、紙を束ねたものを見つけた。


 何が書いてあるか中を開いて確認してみる。




「それは?」


「どうやらさっきの白髪の人の手記みたいですよ。手記の間に写真も入っていたし、間違いないですよ。」




 白髪の人は、どうやら女性みたいだ。


 彼女の手記には、自分は小説家の卵で師匠に弟子入りしていたこと。そして、師匠への恨みつらみが書かれていた。


 彼女は、師匠に身体を強要されていた。それを、断ると決まっていた小説家デビューか勝手に断り、挙句の果てには彼女の書いた作品の盗用までしていたようだ。


  


「…最低。こんな仕打ちされてたら師匠を恨む気持ちもわかる気がする。」


「なるほど。それで呪いの対象範囲が限られていたのか」


 私が手記を読んで鬱屈とした気持ちになっていると、巴が隣で何かに納得したように頷いていた。




「どうした急に?」




「…変だと思わないか?呪いにかかったのが何故小説家の弟子たちだけだったのか。しかも女性だけ。」




 確かに、松田大西の弟子は、彼女以外に男の人たちもいた。巴は、白髪の女は、かなり強力な呪いだと言っていた。そんなに強い呪いなら他の人も呪われていたはず…。しかし、実際には呪われていない。




「確かに変だわ。」




「呪いは、対象範囲が狭いほど効果を強く発揮する。それで呪いにかけられたのが、親和性の高い自分と同じく師匠に恨みをもつ小説家志望の女性だけだったというわけだ。」




「…なるほど。」




「これで呪いはあるって証明できたけど、それで、今回の事件の記事どうするの?」


「もちろん書くわ。私は、記者。真実をかくのが仕事だから。」




「と言っても、こんな荒唐無稽の記事は、どこも載せてくれないだろうし、完全に私の自己満だけど…。」




「愛実ちゃんが納得できるならそれでいいんじゃない?」




「それもそうね。どこも載せてくれないんだったら、自分のツィッターにでもあげておくわ。」


 


 巴のおかげで、悩みはすっかり晴れて、清々しい気分になった。




「けど、上から今回の取材の記事書くように言われてるんでしょ?どうするの?」




 そうだった。さっきまで、の清々しかった気分は一瞬で落ち込んだ。




「そうだよね。代わりに別の記事書くにしてもいい情報ネタもないし、巴なんかいい情報ない?」




 私が振り返ると巴は、腕を頭の後ろで組みながら、不敵に笑った。




「さぁ?どうだろ?」




「ああ…!その顔なにか知ってるわね!何か知ってるなら教えてなさいよ!」




「じゃあさ、そのかわりに今度デートとしてよ。」




「するかぁ!!」


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