最終話 恐ろしい秘密・事件解決

「あなたには罪をきちんと償っていただきます。」


 佐藤は森原さんを殺害した家入が証言したため、「殺人教唆罪」で逮捕することにした。その担当を中谷が請け負うことになった。


 佐藤は〇〇市の一等地に家を建てていた。周りの家とは大きさが明らかに違った。周辺の住民によると、よく佐藤の家には高級車が出入りしているらしく、そのほとんどの車は佐藤のものではないらしい。


 佐藤の家に着くと、中谷は大きく息を吸った。そして、玄関のチャイムを押した。するとすぐに

「どちら様ですか?」と、返ってきた。

「警察のものなんですが、お話があるため伺いました。」

「そうですか……。今行きます。」そう話してから、少しして佐藤が現れた。


 佐藤は部屋着のような服装であり、手を後ろに組んで出てきた。

「要件とはなんですか?」

「森原さん殺害事件のことなんですけど」

「そのことか!」佐藤は後ろに回していた手を前に出して、手に持っていた『物』を中谷の腹に押し付けた。

 

 しかし、その持っていた『物』が「カランカラン」と、音を立てて地面に落ちた。中谷の腹部の服は破けていて、その穴から防弾チョッキがのぞいていた。近くに隠れていた4,5人の警官が佐藤の周りを取り囲んだ。中谷は落ちた『物』を拾った。それは50口径の拳銃だった。

「佐藤さん、あなたならそう来ると思いましたよ。同じような方法で、仲田を殺害したんですね。殺人未遂で現行犯逮捕します。ちょっといいですか? 家に入らせてもらいますよ。」

中谷は佐藤に手錠をかける。

「くそっ。」


 佐藤の家は2階建てで、特にリビングがとても広かった。

「今回は森原さん殺害事件などのことでお話を伺いにきたんですけど、罪を重ねてしまいましたね。ここにきた目的の1つ目なんですけど、家入さんが『あなたが森原さんを殺害するように指示を出した。』と、証言しているんですけど、あなたは家入さんに指示をして森原さんを殺害させたことを認めますか?」

「はい、認めます。私が彼女に指示を出して、殺させました。というか、刑事さん今『1つ目』って言いました? 私は他には罪を犯していませんよ。」

「それはどうですかね? 佐藤さん、あそこにある大きな金庫の中身は何ですか?」

「あ、あれは"私の"宝石が入っている。大事だからね。厳重に保管しているよ。」

「それは本当ですか? 数年前に花上高校の近くで宝石強盗事件があったのを覚えていますか?」

「そんな事件ありましたね。でも、犯人は逮捕されたのではないのですか?」

「その黒幕がいたとしたら……、どうしますか?」

「それはどういう意味ですか?」

「その人物は、部下が持ち逃げしないように常に見張っていた。そして『副校長にバレたから、殺した』と連絡を受ける。その人物は近くにいるため、すぐに現場に駆けつけることができた。」

「バカバカしい」


「単刀直入にお尋ねします。直近8年間、花上高校では5件の殺人事件が発生しています。この発生している殺人事件の全てに関わっているのではありませんか?」

「そりゃあ関わっていますよ。教育委員会教育長という立場なので。」

「そうですか……。6年後、管理員の秋宮さんが殺害されました。彼を殺害したのは、村野くんという少年でした。しかし、彼は誰かに唆された可能性が高いのです。彼の財布に出所不明の高額な現金が入っていました。到底子供が持つような額ではありませんでした。彼の親は『知らない。』と言っていました。」

「佐藤さん、あなたは管理員を無くそうとして学校側と揉めていたそうですね。秋宮さんが邪魔だった。それで村野くんに頼んで消してもらった。あなたは決して自分の手を汚さない。」

「私がそんな真似をするわけがない。」


「他にもあります。去年の冬に当時の校長の奥さんが焼死体となって発見されました。結末は奥さんの自殺ということで事件は解決だったのですが、夫である吉川尚輝さんが一度受け取った保険金の内ほとんどを引き出していたということが謎のままで事件は終わりになりました。これは後から分かったことなんですが、吉川さんは毎月3000万円を引き出していたそうです。あなたがお金を受け取っていたのではないですか? まぁ理由は大体わかります。あなたの口座を確認したらわかることです。」

「ふぅ。」


「次は今年が始まってすぐに発生した事件です。この事件では花上高校で猛威を振るっていた不良集団のリーダーが殺害されました。犯人は当時付き合っていた坂見さんだったのですが、彼女の日記から『仕事をすれば推薦GET!』と書かれていました。あなたは花上高校を腐敗させたくなかった。そこでグループのトップを殺害させることにした。ここでもあなたは自分の手を汚さなかった。坂見に大学への推薦をする代わりに名藤を殺害させた。」

「いや、そんなことはない!」


「最後に先月発生した、殺人事件では再び管理員が殺害されました。犯人として逮捕されたのは元教育委員会委員の家入さんでした。彼女はあなたが指示を出したと証言しました。その事から私は全ての事件を見直し、あなたに辿り着きました。ここまで長い話を聞いてくださってありがとうございます。私が話した内容に誤りはありますか? 全て証拠は揃っています。」

「全てがうまく行くわけではないのだな。私はこの地位についてからは母校である花上高校を守ろうと必死に頑張ってきた。しかし、校長と生徒があれでは何も変わりはしないな。私の思い通りには動かないな。」

「認めるということですね。」

「はい。もう、ここまでバレているのでは抵抗はしません。」


「最後に金庫から宝石を出してもらってもいいですか? 強盗したものですよね? 宝石店に返しましょう。」


 結局仲田も佐藤に殺害されたということだった。中谷は肩の重荷が降りた感じがした。全てが終わった。この事件はほとんど仲田が解決したようなものだ。中谷も仲田のメモがないと解決できなかっただろう。仲田はまだ若かったが、ここまでの推理力を持っていたということは否定できない事実だ。警察は1人の大きな存在を失ってしまったことになった。


「花上高校」(終)

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花上高校 暁月 学 @Akatuki_Gaku

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