第3話 事件解決(1)

 三笹は家入のスマホを開いて電話履歴を見ると、上から並んでいたのは色々な人たちの連絡先だった。しかし、1番の上の通話履歴の年月日は2024年の3月となっていた。三笹はそんなバカなことはないと思った。今の日付は2025年8月23日だ。流石に1年半の間電話を使っていないとは考えづらい。なぜなら、連絡先の中に最近追加された人の連絡先が入っていたからだ。そのことによって、一番最近の連絡の履歴の時間軸がおかしいことは明らかだ。


 三笹は「始まりの事件」で活躍した、スマホの解析班を呼び寄せて家入のスマホを解析してもらうことにした。すぐに来てくれて、10分ほどで削除された通話履歴を復元してくれた。そこには、友人や事務連絡の履歴と共に現在教育委員長である佐藤の名前が最近になって大量に表示されていた。


 家入は佐藤が嫌いになったためこの学校に来たため、今更佐藤から連絡が来る理由がわからない。しかし、三笹はすでに調べていた。教育委員会に勤めていた時と現在勤めている花上高校の給料の違いだ。花上高校の給料は教育委員会よりも年200万円違うということだ。一般的には高校の方が多いのだが、花上高校は地方の小さな学校のため給料が少ない。


 また、家入は教育委員会に勤めていた時にとても優秀だったらしく、佐藤が今猛アピールをしているという話も聞いた。


 三笹は今わかった情報を中谷に伝えた。



 中谷は家入が何かを隠しているとは思っていたが、まさか前の職場の上司に当たる佐藤に連絡をとっているとは思わなかった。


 また、三笹から佐藤が家入に「戻ってきてほしい」と言っていたと聞いていた為、佐藤から家入に電話することはあっても、家入が佐藤に電話することはありえないと思った。また、三笹から給料の問題も聞いた為、家入が教育委員会に戻りたがっていた可能性が浮上した。その時、中谷は全てがつながった気がした。


 中谷は家入を呼んで事情聴取をすることにした。


「家入さん、来てくださってありがとうございます。」

「何ですか?以前に全てお話ししました。」

「そのことについてなんですが、単刀直入にお聞きします。あなたは嘘をついていますよね?」

「何を言ってるんですか?全て正しくお話ししましたよ。」

「あなたは佐藤を嫌いにはなってはいないですよね?」

「いや、彼が独裁的なやり方をしていたので、この学校に来ました。」

「あ、そうだ。スマホをお返ししますね。あなたのスマホの通話履歴を見させていただきました。あと、ついでに消されていた履歴も復元しておきましたよ。」

すると、家入が明らかに動揺したのを中谷は見逃さなかった。

「そ、それは、プライバシーの侵害ではないのですか?」

「侵害にはならないのですが、勝手にみてしまいすみません。しかし、佐藤さんにたくさん連絡を取られていましたね。なぜですか?私たちの手元には、佐藤さんのやり方が嫌になったためこちらの学校に来た、となっていますがおかしいですね。仲が良いのですか?」

「いや、それは、その、まぁ、昔の話をしたり…」

「とぼけるのもいい加減にしたらどうですか?あなたはあの電話で森原さんの死についての話をしたのでは無いですか?」

「そんなところまでわかっているのですね…。そうです。私は佐藤さんに指示されて、森原さんを殺害しました。最近花上高校の給料が少なく困っていた時に、佐藤から電話がきました。こちらに戻ってこないか、と。私は戻りたいなと思っていた頃だったんです。佐藤は戻ってくる条件として、管理員の森原を殺せ、と言ってきました。そうすれば給料を上げても良い、とも。私は金に目が眩んでしまいました。金のためならバレない殺人をしようと思ったんです。けど、私には無理でしたね。」

「あなたは、真の犯罪者ではないですよね。奥さんを殺害するつもりはなかった、そうではないですか?」

「なんでそれを?」

「森原さんの奥さんが落花生アレルギーというのを聞いたので。」

「そうです。せめて、罪のない人をと思って。」

「でも、森原さんを殺害したことには間違いありません。しっかり罪を償ってきてください。」


 中谷はこの事件の経緯を見直していると、あることに気づいた。

「仲田…、そうだったのか…、おれ、俺が、絶対犯人を逮捕する!」中谷は叫んだ。

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