探偵流おもてなし

ここグラ

探偵流おもてなし

「「「あと1時間で、高級料理のおもてなしをしたいんです!!」」」


 うん、訪ねてきたのが美少女3人じゃなかったら追い返しているところだ。俺の名前は川上かわかみ、探偵をしているが……家賃を払うのが精一杯の無名探偵だ。


「とりあえず、事情を聞かせてくれ」

「はい……私は夕張ゆうばりっていうんですが、3人とも同じ大学に通っていて、同じ夢を持つ者同士高校時代から仲良しなんです」

「あたしの名前は焼津やいづ。今は3人同じアパートに住んでるんだけど、今日以前の担任の先生から電話がかかってきて、こっちに来る用があるらしいの」

「ウチは勝沼かつぬまや。その先生には色々お世話になったさかい、しっかりおもてなししたくてアパートに寄るよう誘ったんやけど……急な上にお金がなくて」


 なるほど、だからいかにも流行ってなさそうでお金もあまり取りそうにない俺の事務所に相談に来たってわけか。


「つまり、時間もお金もない中、その恩師に高級で美味しい物を食べさせたいと?」

「はい……先生は良い人ですから、安いお茶を出すだけでも喜んでくれるでしょうけど」

「忙しくって疲れてるって言ってたしね、ちゃんと食べさせてあげたい。でも、あたしが出そうとしても、きゅうりの漬物くらいしか」

「今日ウチら食べたの、御飯とレトルト味噌汁とアボカドサラダだけやし……」


 ふむ……これはもしかしたら、何とかなるかもしれないな。あと数点確認できれば。


「最低限の調味料は、アパートにあるのか?」

「はい、醤油とかソースとかなら」

「甘い物食べたい時に、はちみつあると便利だし」

「梅干しあれば、とりあえず御飯のおかずになるんで」


***


「どうだった?」

「驚きました……川上さんの言った通り、先生満足して帰っていきました」

「メロンとマグロのトロと赤ワイン、十分堪能したって。あたしもびっくりした」

「一体どういうマジック使ったんや?」

「簡単さ、君達の名前がヒントになったんだ」

「「「名前?」」」


 3人とも俺の言葉に首を傾げた。うーむ……美少女3人がそれをやると絵になるなあ。


「まず夕張さん、きゅうりとはちみつを合わせるとメロンみたいな味になる」

「あ……夕張メロン」

「次に焼津さん、アボカドに醤油をかけるとマグロのトロみたいな味になる」

「や、焼津マグロ……」

「最後に勝沼さん、梅干しと緑茶を混ぜると赤ワインみたいな味になる」

「勝沼……ワイン」

「まあ、よく味わえば本物じゃないっていうのは分かるけど、忙しくて疲れているなら舌が鈍って、繊細な違いに気づきにくいからね。フードペアリングって奴だ」


 俺の言葉に3人とも目を丸くしていると、急に立ち上がって俺を尊敬の眼差しで見てきた。


「決めました!! 私達、川上さんの探偵事務所の助手になります!!」

「へ……どういうこと?」

「実はあたし達、探偵の助手になるのが夢なの。でもお金も才能もないし、無理かなって思ってたんだけど」

「いや……俺、普通に貧乏だしボンクラだし、やめておいた方が」

「川上さんがええんや!! ウチらで川上さんを日本一の探偵にしたるで!!」


 こうして美少女3人の助手のおかげもあり、川上探偵事務所は日本を代表する探偵事務所になったのだった。

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