謎は小さく、解決は大きく‼ 本格ミステリの一つの理想形☺️
- ★★★ Excellent!!!
本作の魅力については、すでに読み巧者の諸氏が的確なレビューを書かれておりますので、自分は本格ミステリという観点に絞って。
常々、思っていることなのですが、本格ミステリにおいては、謎が不可思議であればあるほど、いうなれば謎が大きければ大きいほど良しとされる傾向があるように思うのですが、実際の作品の多くは、謎の大きさに対して解決が小さい、つまりは解決が謎の魅力に負けてしまっている、ということが結構見受けられるように感じています。
それよりは、戦略的に、あえて謎を小さくして解決を大きくした方が、結果的にミステリとしての衝撃度が増すのになあと思うのです。
ただ、その分、解決編に至るまでのリーダビリティが弱いという面があるのは否めないかもしれません。
とすると、謎>解決か、謎<解決か、これは結局は読者の好みによるということかもしれませんが…
しかしながら、本作に限っていえば、作者の力量はすでに諸作で実証済なので、謎が小さいのは好みではないと思う読者の方も、安心して読み進めていただきたいと思います。
ほのぼのとした何気ない日常の描写が続きますが、解決編に至って、物語の様相ががらりと変貌し、紛うことなき本格ミステリとしての姿が全貌を現します。
まさに、謎<解決、の理想形だと思います。
何気ない日常の描写の中に隠された矛盾から、堅牢なロジックが紡ぎ出される過程は、お見事としか言いようがありません。
とある風景描写や、地図の一部分の記載に隠された真の意味に気づく読者はおそらく皆無でしょう。
繰り返しますが、謎の不可思議さ大きさだけが本格ミステリの魅力ではなく、謎が解決に至って大きな広がりを見せる。
そのような作品も本格ミステリの理想形の一つであり、本作はそのことを実践していると断言します。
ミステリに少しでも興味のある方なら、ご一読をおススメいたします。