第22話 決着

「てめえ。何だ、その力は」


 ライナーが問う。

 明らかにティーナの力は異常だった。幼い少女の出せる力では、絶対にない。

 血塗れになった自身のトンファーをじっと見つめ、ラザリアの骸を一瞥したあと、ギロッとライナーに鋭い視線を送った。


「私の就いたジョブは〈子龍〉。龍気の強化を貴様らは甘く見すぎだ」


 〈仙人〉が〈仙気〉を操れるように、〈子龍〉は〈龍気〉を操れるようになる〈龍気操作〉スキルを会得する。これによって〈子龍〉に就いた者はまず自分の中でわずかに流れる〈龍気〉の扱いを学ぶのが通常の成長ルートである。

 しかしティーナの場合は事情が異なる。本性を深紅龍であるティーナはすでに〈龍気操作〉を、赤字表記ではあるが会得済みである。そんなティーナが新たに〈子龍〉などというジョブに就いたとして、何か意味があったのか。

 その答えが初めてジョブに就いたことによるスキル取得ボーナス、〈龍気解放〉。短時間のうちに龍気を過剰供給することによって全能力を二倍にまで引き上げる。今のティーナであれば十五分ほどだろうか。


 しかし、ティーナにそこまでの余裕はない。

 ホムンクルスの第三形態、半魔型。ある意味この形態こそがユウキの目指した完成形ではあるが、これは人間の身体に無理矢理魔物の力を押し込んだのと同じこと。日常生活ならともかく長時間の戦闘には耐えられない構造になっている。

 本来、ホムンクルスは大人型をもって完成となす。これは子供からの成長を挟むことで元々別のモノであるホムンクルスの肉体と融合した魔物の肉体を、高いレベルで調和させる目的があった。


 子供時代に半魔型となれないのはその弊害。ホムンクルスと魔物のそれぞれの肉体が反発を起こして自壊を引き起こしてしまう――。

 これが今のティーナには耐えられない力だというのも承知している。

 しかし、この力が必要だった。

 ティーナがこの力に気づいたのはメロスの作ったゴーレムとの特訓中。あまりに一方的に敗北が続くのに業を煮やして、それまで使ってこなかった半魔型に変化したとき。メロスが反則、そして危険と判断し緊急時以外の使用を禁止を申し渡した裏技。


 半魔形態における戦闘時間はおよそ三十分。ただでさえ限界近くまで高められた身体能力に、〈龍気解放〉によるさらなる強化。

 試したことはないが、おそらく制限時間は五分。十分は絶対に届かないだろう。

 ただ立っているだけで体のあちこちが悲鳴をあげる。ギシギシと筋肉が嫌な音を立てている。肉体の限界はとっくに越えている。


 まるでメロスに〈不死再生〉を使われたみたいな短時間の命の燃焼。なぜ大事な戦いではこんなギリギリになるのだろう。決まっている、弱いからだ。今のティーナがどうしようもなく弱くて、命を懸ける以外に強くなる方法がないからだ。

 それが酷く悔しい。本来の姿になれば、とちらりと頭を掠めた。

 それでも。

 魔物型――龍となって一撃で葬るのは絶対にできない。こいつらは直接殴り殺さなければティーナの気が済まない。一瞬の痛みで済ませてなるものか。


 ルカ。背後で倒れているあの子のことを想うだけで、煮だつような激情が全身に行き渡る。

 鍵なんて頼まなければよかった――そんな風に考えるつもりは毛頭ない。ルカの努力を否定してなるものか。

 全ての怒りの矛先はこの忌々しい冒険者共に。

 ギリ、とトンファーを握りしめた。

 ロイドを見据える。ティーナの視線にわずかな恐怖を見せ身動ぎしたその瞬間――ティーナはナユタの大地を踏み抜く勢いでロイドへ飛んだ。滑走、身体を低くし地面すれすれを掛けるティーナにはそんな言葉が相応しかった。


「なろう!」


 急接近するティーナにロイドが反応し剣を突き刺してくる。左のトンファーで弾いたが、予期していたのかすぐに斬り返してきた。

 いつもと全く違う感覚。迫ってくる凶刃がまるで自分の命を奪えるようなものには思えなかった。わずかに頭を下げると頭上を刃が抜けて行った。

 ようやく攻撃範囲に至り攻撃しようとしたとき、横から向かってくる殺気に反応して反対側に飛んだ。二瞬後、首のあった場所をもう一本の刃が通過する。

 ライナー。

 殺気を飛ばしてくるその姿を見たとき、ルカが馬乗りになって殴られている光景が脳裏をよぎった。何度も殴られ、殺されかけた瑠璃の少女。瞬間、ティーナの心がはち切れた。スキル〈復讐心〉の自動発動。視界が全て赤のガラスを通したような色に染まった。

 ――全スキルの能力上昇、ステータス上昇、一部スキルの条件解放。

 聞こえないはずのシステム音声が聞こえた気がした。


「があああああっ!!」


 咆哮。ビリビリと空気が震え、世界がティーナに怯えた。

 ロイドとライナーの本能が強者を前にして竦み、硬直する。その瞬間、ティーナはロイドの目の前にいた。同じ目線の高さで視線が交錯する。

 果たしてロイドはティーナが飛んできたことを認識できたのだろうか。それは永遠に不明となる。なぜなら―ー、


 ――ボグンッ


 ロイドの額にトンファーがめり込んだ。ティーナの迸る殺意を一身に受けたロイドは、しばらく視線を宙に彷徨わせ、やがてぐりんと上を向く。

 一歩、二歩。すでに骸と化したはずのロイドは後ろに下がり、突然糸の切れた人形のように崩れ落ちた。

 残りはライナーただ一人。ティーナは鋭く見やる。あっという間に一人となったライナーの全身はカタカタ細かく震え、向けてくる切っ先は安定しない。今にも逃げ出しかねない無様な姿を見て、ティーナは口角を上げた。

 その恐怖に呑まれ切った顔が見たかった。

 ロイドに向いていた体の向きをライナーに向ける。それだけでビクリと怯えた。


「なんだってんだよ、俺達が何したってんだよ!」

「この期に及んでそのセリフはなかろう」


 何をしたかと問われれば、メチャクチャにしてくれたというのが最初に過ぎった想いだ。

 ティーナに馬乗りになって何度も殴り、壱号と弐号を破壊し、首輪をつけ、鎖で繋ぎ、まずい食事を食わせ、ルカを死なせる一歩手前まで追い詰めた。

 こいつらがやったことのどれひとつ取っても許せることではない。改めて思い出すとさらに憤怒が燃え盛る。

 何時間でも、何日でも、何年でも。魂をすり潰すまで拷問して苦しませてから殺してやりたい。生きてきたことを後悔させるほど――いや、生まれ変わることすら拒否したくなるような地獄を味あわせてやりたい。この肉体の制限時間さえなければ確実にやっていた。


 ピシリ。


 突然太腿の皮膚が縦に裂け血が飛び散った。ティーナは点々と地面を色づかせた己の血を一瞥し、再びライナーに見やる。奴は何もしていないのにティーナが怪我をしたことで目を見開いていた。

 そして、にんまりと笑みを形作る。


「そうか、その力。あんまり長い時間は使えねえな?」

「貴様は喋らなくて良い」


 ライナーの言葉を拒絶すると共にふっ、と飛ぶ。柔らかい動きで、豹のようなしなやかさで。残念ながらライナーの言ったことは事実だ、もはや秒単位で削られていく時間が惜しい。あとどれぐらいまで身体が堪えられるのか、さっぱりわからない。

 苦しめて殺すのは惜しいが無理だ。即殺を選択し、ライナーとの距離を詰めようとする。

 まだ距離がある中、ライナーが横薙ぎに剣を振るった。


「――っ!」


 咄嗟に横へ跳ねた。何をしようとしたのか理解したわけではなく、嫌な気配を感じての行動だった。直後、見えない何かがさっきまでティーナのいた場所を通り過ぎる。背後で深い斬撃音。スキルを使われた。見る限り斬撃を飛ばすタイプか。

 瞬時にそう判断し、再度剣を振りかぶったライナーに警戒する。


 縦斬り。

 地面を抉りながら見えない斬撃が迫ってくるのを、再び横に飛んで避けた。斬撃が後ろへ流れていく。ティーナは小さく舌打ちした。

 威力はあるようだが避けることに徹してしまえば問題ない速度。鈍すぎて当たる方が難しいぐらいだ。ただし、接近しながらとなると容易ではなくなる。

 スキルには発動前の準備時間と、発動後の硬直時間がある。どちらもスキルの習熟度を上げていくことで短縮できるが、わずかなディレイで連発してきたことを考えると、それなりにレベルが高い。


 さすがは元剣奴というところか。おそらく消費魔力も大したことはないのだろう。ライナーの魔力が尽きるまで連発させるより、ティーナに限界が訪れる方が早そうだった。

 口をむっと真一文字に結んだティーナは、再び接近を試みる。即座に飛んできた斬撃。三度目だ、見えなくともおよその攻撃範囲と速度を予測し、ギリギリで体を捻って避ける。緋色の前髪が数本舞ったが、怪我はない。


 よしと再びライナーを見たとき、すでに剣を振りかぶり次の準備をしていた。ティーナが目を瞠る。直後にライナーの剣を振ろうとする動作に反応して、後ろに飛び退った。飛ぶ斬撃に備える。


 ――だが、剣を振り切ったライナーから攻撃は飛んでこなかった。


 フェイント。そんなものに引っかかって稼いだ以上の距離を下がってしまった。やはり、人との戦いはライナーに一日の長がある。このまま時間を稼がれてしまえばティーナの敗北は決定的だった。

 ピシ。

 背中が肩口から腰にかけて裂ける感触が走った。痛みに小さく眉をひそめる。いつの間にか全身のあちこちが裂けて血が流れていた。このままだと失血死の可能性もあるか。


 ……仕方ない。


 ティーナは〈龍気解放〉を解いた。覆っていた赤い燐光が消える。これでもう少しぐらいは時間が稼げるはずだ。

 共にあった万能感が遠ざかり、代わりに急激な能力ダウンによる脱力感が襲いかかってくる。


「はは、限界みてえだな」


 呆然と見やり、すぐ機嫌良さげに笑ったライナーの声を聞き流して、スキル発動の準備に入る。

 二週間ほど前、メロスはルカのことを広域殲滅型の魔術師と評した。しかし真実は状態異常特化型の魔術師だった。

 なぜメロスはそんな勘違いをしたのか。それはメロスが一撃を高めるタイプだと思ったから。

 つまりルカの広域殲滅型が間違っていたということは、ティーナの一撃特化型というのも間違いだったということに他ならない。

 ではティーナの得意とするものはなんだろうか。

 ティーナは自身のスキル欄にあった数多の赤文字で表記されたスキルを思い出す。あれらを見る限り、ティーナこそ広域殲滅型というに相応しいが、スキル構成を見たティーナの印象はわずかに違った。

 限りなく近いがしっくりこない。ただ語感だけの問題という気もしなくなかったが、よくわからないむず痒さを消すために広域殲滅に変わる言葉をティーナは名乗っている。


 すなわち――殲滅特化型。


 この言葉が広域殲滅よりもティーナの中に透き通った。個を相手にしても、群を相手にしても十全以上に戦えるスキル群。


「ようやく諦めやがったか。けどな、俺はてめえを許さねえ」

「…………」


 すでにボロボロとなったティーナに戦う力はないと見たライナーが、ゆっくり近づきながらご高説を垂れている。


「あんだけいたコロシアムんときからの仲間をよ。よくもやりやがってくれたな」

「…………」

「てめえだけは何があろうと殺す。おい、なんとか言ったらどうなんだ」

「……〈多重展開マルチプル〉・〈龍の吐息ドラゴン・ブレス〉」


 沈黙を保っていたティーナの目の前に五つの紅い光玉。大きさは大人の拳ほど。〈復讐心〉スキルによって一時的に解放されたスキルの使用。

 龍の力は自然の力。ティーナ一人で足りない分は〈未熟な龍〉スキルで周囲からかき集め凝縮した。さすがに集中する必要があったのだが、余裕を見ていたライナーは馬鹿みたいに口を動かして、肝心の剣を振るわなかったのは助かった。

 そして集約されたエネルギー体は、ティーナの破壊の意思に従って細い光線と変じ、発射された。


 左肘に命中、先が消し飛んだ。

 右上腕に命中、手首が森の奥へと飛んで行った。

 左腿に命中、これも森の中へ。

 右脛に命中、膝から下が消滅した。

 腹部に命中、巨大な風穴の先に向こう側が見えた。


 ここまでティーナが呟いてから瞬きする間よりも短い時間のことである。

 ライナーが〈龍の吐息ドラゴン・ブレス〉の衝撃で吹っ飛び大樹に背中から激突し、跳ね返る。地面に転がったときには白目を剥いて痙攣していた。


「そこの樹にぶつかったときには上半身と下半身が泣き別れになるかと思うたが、存外に丈夫じゃな」


 反応はない。死んではいないし、気を失ってもいないようだが、返事をする余裕まではないか。このまま放置すれば数分と持たず死ぬ。

 ライナーを見下ろすティーナの表情は厳しい。本当なら直接この手で殴り飛ばし、決着をつけたかった。魔術に頼っての攻撃で終わらせたくなかったのに。弱いせいで望んだ結末すら掴めない。

 ずっと血の色に染まっていた視界が元の暗さを取り戻す。〈復讐心〉が切れたようだ。


「……力を散じよ、〈人化〉」


 龍鱗に覆われていたティーナの姿が光に包まれ、そして消えたときにはいつものティーナが立っていた。

 だが、決して無事な姿とは言えない。全身に血に塗れないところはなく、剣で斬られたかと見紛うような傷がそこら中にできていた。むしろ満身創痍で生きているのが不思議なくらいだ。

 左手のトンファーがティーナの手から滑り落ちた。操り手の居なくなった武器は、過酷な戦闘での疲労を癒すように地面に横たわって沈黙する。

 右手のトンファーは手の中でくるんと回転し、短杖のようになった。もう少し長ければ歩く補助に使えたが、杖として使うには長さが足りない。

 ティーナは徐に自分の腕を見る。その動作はひどく緩慢で億劫そうだった。


「これは、ひどいの。ルカが泣きそうじゃ」


 ティーナに尽くしボロボロになった少女を想いそう言ったとき、足元がふらついた。上半身が大きく揺れる。――辛うじて堪えた。


「まだ、倒れるわけには、いかん……」


 足を引きずり、ライナーの元へ向かう。身体がひどく重い。視界もかすむ。それでも足を止めずに移動し、ライナーを見下ろせる場所まできた。

 まだ生きているのを確認すると、トンファーの先をライナーに向けた。狙うべきは眼球。白目を剥いたその場所に震える手で狙いをつけると、全体重を乗せて倒れ込む。

 トンファーが眼球を突き破り脳髄に達する。ライナーはしばらく痙攣したが、やがて動かなくなった。

 せめてものトドメ。

 ――戦いが終わった。

 ティーナはトンファーと手放して立ち上がり、今度はルカの元へ行こうと歩みを進めたが、途中でバランスを崩して前のめりに倒れた。起き上がろうとしたが一向に力が入らず、やがて諦めて仰向けにひっくり返った。

 痛みはもう感じない。弱々しい呼吸と共に空を見上げる。雲しか見えない曇天だった。


「……最後ぐらい……まんてんの、ほしぞらが……よかった、がな…………」


 瞼が重い。何度も閉じそうになるのを必死に堪える。

 やはり、半魔型と〈龍気解放〉の同時使用は無理があった。半魔でなく魔物型であれば圧倒もできた。あいつらにはその程度の力しかなかった。

 だがティーナはどうしてもライナーの顔面に一発入れなければ気が済まなかった。ルカを散々に痛めつけてくれたあいつに、どうしても一発。

 けれど、それももう終わった。瞼が、落ちる。


 ――私は、しっかりやれただろうか。


 あとは――――


「随分な格好ではないか、ティーナ」


 意識が途切れかけたそのとき、懐かしい声が降ってきた。

 同時にほっとする温かさに包まれた。まるで母親に抱かれているような安心感が心を満たす。弱まっていた呼吸に強さが戻ってきた。

 痛みが薄れ消えていく。

 そっと瞼を開ける。

 そこには仏頂面をした黒髪の男――師匠がいた。


「事情は壱号と弐号に聞いた。まったくお前達二人も運が悪い」

「……いつから、みてた?」

「お前が半魔型になったところからだな」


 それを聞いて、ティーナの内心に強い驚きが広がった。あれだけあちこち動き回って魔物に遭遇しなかったのは、メロスがこっそり助けてくれていたからだと思っていたのに、どうやら本当に運が良かっただけらしい。

 半魔型と〈龍気解放〉の同時使用したのだって死ぬつもりではなかった。どうせメロスが助けてくれるだろうと、心のどこかで安心していたからだ。

 なのに、メロスは今の今まで見ていなかったと。助けに来るのが遅いではないかと責めようと思えば、飛び出してきた事実にティーナの時間が止まった。

 やがて思っていた以上に瀬戸際だったのだと徐々に理解が染み入るにつれ、ティーナの顔から血の気が引いた。


「どうした、まだ顔が青いな。傷は完治させたはずだが」

「……いや、なんでもない。そうか、帰ってきたばかりだったか……ハハ……」


 小さく乾いた笑いが漏れた。

 見下ろすメロスはよくわからんとばかりに肩を竦め、未だ横たわったままだったティーナを抱き上げた。

 途端にティーナの心を羞恥一色に染め上げる。


「こら、何をする!」

「死闘だったのだろう? 少し休め」


 器用に片腕を椅子のようにして支え、ティーナを落ちないようにする。ピタリとくっついたメロスの体温が触れた手のひらから伝わってくる。顔を上げればメロスの横顔がすぐ傍にあった。

 ティーナは気恥ずかしさにメロスの腕の中で右往左往し、やがて俯いてうーと低く唸った。メロスのこういう優しい扱いには慣れていない。

 もはや顔を真っ赤にし借りてきた猫のように大人しい。

 メロスが裸に剥かれたままこんこんと眠り続けるルカを見る。〈インベントリ〉から布を取り出すと、ルカを巻くようにしながら抱き上げた。


「ルカの様子はどうじゃ?」

「多少怪我をしているが、その程度だな」

「ルカはかなり殴られて、奥歯まで折られおった。ライフ・ポーションは飲ませたが、後でちゃんと見てやってくれ」

「よかろう。明日にはユウキの元に行ってみるとしようか」


 ティーナはほっと胸を撫で下ろした。メロスが任せろと言ったなら、もう大丈夫だという安心感があった。

 トスと頭をメロスの肩に凭れさせた。

 長い、長い一日だった。

 すっかり回復させてもらったはずなのに、また瞼が重くなってきた。……眠い。


「よく頑張ったな。今はもう休め」


 メロスの優しげな声が耳朶に心地よい。ならばお言葉に甘えてそうさせてもらおう。

 もう眠くてしかたない。ティーナはゆっくり瞼を閉じた。

 視界が閉ざされ、温かい暗闇に包まれる。

 この場所は安心する。ティーナはすぐに夢すらみない深い眠りについた。

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隠者の暇潰し ハナモト @hanamoto

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