獣と蔑むのは誰か。

同族同士で食らい合うことで強くなり、最後に残った一人が新人類の母となる――その計画のために生み出された、人ならざる少女たちの物語。
男子高校生が自分と同じ歳ぐらいの女性と二人で暮らし、次々と女の子を拾ったり襲われたりする、という中々見栄えのしそうな筋立て。しかしてその実態は、サバイバルバトルよりもラブストーリーに重きが置かれていたと思います。カニバリズムを始め、様々な背徳的要素を絡めながら……。
しかしそんな彼女たちを、タイトルにあるように「獣」と外部から罵る人間はいません。彼女たち自身が自らをそう呼び、蔑むのです。
その意味に気づいた時、この物語が非常に「閉じた関係性、閉じた世界」のものであると解釈いたしました。獣を作ったのは余人なれど、蠱毒の壺に押し込めたのは造物者ではなく、獣たち自身なのです。エピローグの果てに、閉じた世界は開くのか、蠱毒の呪は終わるのか。
願わくば、彼女たちに檻から解き放たれた、広い世界がありますように。