理不尽に道から外された主人公が、底抜けに明るくてトんでる幼馴染サチコとともに人生を脱線するという話。読み心地は軽快そのもの。障害物のない、どこまでも青い空や濃い緑、白い道が続く、田舎の光景を思わせる。でも、大人のふたりは知っている。実際はどこまでも続いてはいないことを。バカをやりながら、アホだと笑いながら、それでも半ば冷めている。肩透かしと空回りを繰り返しながら、それでも諦めきれずにぶつかりたかった。そんな感じがほのかにしょっぱい。読み口軽めでしっかり酔える一作。
本作がテーマしている部分は非常に奥深く、それを丁寧に描いているなと感じました。努力して夢を達成することができた人生。頑張れずに思い描いたのとは全く違う道を歩いてしまった人生。色々な人生がある中で、本作は後者、その中でも多くの人が当てはまりそうな生き方を描いているのが秀逸でした。
なんてキャッチーなタイトルなんだ
青春だった。すごくよかったです。
なにがあるというわけではないが、なにかがある。強いて言えば、読んだ人の共感を得る作品。欠片も似つかわしくない体験をしてきた人でも、同様の想いを抱くはず。あるていど歳を重ねた人ならば、そう感じるのではないでしょうか。……たしかに、なにかがひっかかる。これって、なんだろうと考えると「時の流れ」かな……。読んでみて、是非。
冒頭、のどかな田園風景に遠慮も無しに登場する異物。あまりにも堂々と恥ずかしげもなく飛び交うものだから、BGMで掛けていた久◯譲の夏の曲が次第に違和感なくなりました。不格好で不器用な若者よ。足掻くがいいさ。カエルよりも力強く。いつか台風が来るかもしれないから。
これでもかっていう言うぐらいの田舎、夢破れた若者、そして変人なヒロインがボクっ娘。おしゃれさと地に着いた生活感が融合していて読んでいると不思議な魅力があります。中でもヒロインのサチコはボクっ娘で完璧です。小学校のクラスにいたような感じもするけど、こんなに変じゃなかったしこんなに好きにはなれなかったような。凄まじいエネルギッシュさで話をガンガン転がしていく存在で、本当に印象的です。そしてボクっ娘であり、とにかくかわいいのでみなさんにも読んで欲しいです。
蛙の死体が空を飛んでいくのに、なにやら爽やかな空気がある。汗と努力と涙と恋と愛と死が出てくるので、完全に青春群像劇ですね。
これからが楽しみ(*^▽^*)!
各章のタイトルからも村上春樹作品へのパロディ意識を感じますが、全体としてはパロディ要素をやりつつも尖ったオリジナリティを持った作品になっているのではないかと思います。第一話のカエルの脚を切るどうしようもないダメさを漂わせる夏の光景は、ヒロインの造形とも相まって非常に心に刺さるような、どこかノスタルジックな雰囲気を漂わせており、なんともいえない良さがあります。行き場のないモラトリアムから主人公がどう動くのか。ストーリーは勿論、作中の雰囲気も楽しみにしながら続きを待ちたいと思います。