知りすぎていた男編⑪

それから毎日、僕の勤めているパチンコ屋に男達が来ないか?

内心ビビりながら仕事していた。

が、一度も来なかった。


思えば、Nが男達にスロットの高設定台を教えて、脅されて辞めたという事実がなければ、

その一件を僕が知らなければ、

男達の口車に乗っていたかもしれない。

あそこまで、男達の誘いを突っ張る事ができなかったかもしれない。


やはり、Nの愚行で逆に僕が救われたようなものだ。


数年後、僕はその店の主任になっており、深夜まで勤務したのち、近所のコンビニに寄った。

その時、駐車場のトラックのクラクションが鳴る。

なんだ、と思って見てみたら、Nだ!


「原田さん!お久しぶりです!」


Nはコンビニに商品を配送する仕事をしていた。

二人で久しぶりの再会を喜び、コンビニの駐車場で缶コーヒーを飲んだ。


「あれから色んな仕事しましたけど、どこも給料安くてしんどいですよ。パチンコ屋の店員が楽に思えるくらい。」


「そりゃあ、パチンコ屋は慣れたら要領よく仕事できるからな。」


「そうそう!原田さん!」


「なに?」


「出る台、教えて下さいよ!」


「アホか!!」


もちろん冗談である。

Nなりの、冗談であった・・・・


パチンコ屋店員は出る台がわかる時がある。

でも知らない方が良い。

知らない方が幸せなのだ・・・

私利私欲に走るものには、破滅がある。


それが、今回最も伝えたかったテーマです。


どこまでうまく伝えれたかわかりませんが、

パチンコ屋店員に、

「出る台教えて!」

の質問は、かなりのタブーです。


そんなものが、もしわかるなら。

僕は、人に教えず、自分で打ちます。(>_<)


長い事、ご愛読ありがとうございました。

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パチンコ屋店員芸人奮闘記「それでも僕は、やめていない」 原田おさむ @osamu

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