心を通わせることの喜び。

自己中心的で打算的な権力者の家に生まれ、暖かな感情を学ぶことができずにいた孤独な少年。川岸で倒れていた、名前すらわからず口を聞こうともしない少年。
明らかなのは、名も名乗らぬその少年の瞳が、鮮やかな緑色をしている、ということだけ。
ふとした偶然から出会った、深く心を閉ざした二人の少年。彼らが僅かずつお互いの心を通わせ始め、「相手を思う」ことを知っていく。そんな心の変化を丁寧に、静かに描き出した物語です。

誰にも心を開くことのなかった孤独な少年が、無反応に黙ったままの少年へ語りかけ、そのことで自ら心を開いていく。反応を返さない、という相手の態度が初めて安心感を与える。少年の心の動きは、複雑な人間の感情をとてもよく捉えており、物語の中へ読者を強く引き込んでいきます。

そして、冷淡だった少年の心が初めて暖かさを持った時、彼が自ら選んだ道とは——。

少年二人のその後に思いを馳せずにはいられない、深い魅力に溢れた作品です。