浪人とは、目測を誤ったチャレンジャーである

将来の目標へ向けて時間調整を誤ったがゆえに生まれる1年間という時間。

それらが1話ごとに濃縮されている。現役高校生、受験生にとっては苦い話かもしれない。

私は意外なことに、この作品の中に繊細な伏線を見出した。息抜きとしてスマホに興じる姿は、今となっては珍しくもない。しかし、とあるお菓子のキャッチフレーズ一つで、一気に読者は時間軸を崩されてしまう。

そんな中にも、銅鑼で軍を鼓舞して他者を侵略するというオリジナルのセンスが光る発想も見逃せない。一心不乱にタップで銅鑼を叩くゲームなのであろうか、非常に気になるところである。

私は浪人を経験したことがないが、本作を通して、手帳に密かに書き込んでいるやりたいことリストに浪人を書き加えた。

図らずも浪人と言い張るだけの無職になる可能性も否めないが、本作品が心の支えとなってくれることを願う次第だ。女性の作者であると思い込み、溢れんばかりの情熱を込めてレビューを記すが、男性作家さんであった。同性愛者というわけではないので、ご安心してこれからも更新してもらいたい。