向き合って出てきたのは無数の死体だった

命の大量消費。それが物語における実情だった。
愛を持って生み出したはずの自分のキャラクターは、役目を果たすことなく散っていく。

人の命だけではない。裁判に至るまでの世界は、作者が創造した世界だ。我が国の神話では、やれ棒でかき回して土地を作り、排泄されるものからも命を産み出す。

今日、世界のどこかで、誰かの中に、私が生み出した世界や命は芽吹いているだろうか。わずかな一時の記憶の中だけで、その僅かな生を終えていないか。

本作を読んで、自分の物語を見返す。しかし、そこで縦横無尽の活躍をしていたのは、紛れもない私自身であったし、あまりの無双の活躍っぷりからくる現実とのギャップで昇天したくなる。

すべての作家は、命と世界を産み出す創造主である。その責任のなんたるか、私たちは大量消費に飲まれることなく、省み続けなければならない。

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