ここには、愛すべき狂気と優しい絶望がある

 絶望は、逃れられないから絶望なんだろう。

 驚いて怖くて気持ち悪い。そういうホラーの一般的な楽しみはこの物語にもある。
 だが、この物語が何よりもホラーであるのは、その救いのなさ。
 それは、不条理な結末だとかの安易なオチではない。
 救いのない絶望が、この物語を初めから最後まで貫き通しているのだ。それもひたすらに、淡々と。

 読み終えた今も、この物語に生きる彼らのことを考えている。
 絶望しかないのだろうな、と。
 その日々を笑顔で過ごすんだろうな、と。
 そんな実に重苦しい余韻が読後にもずっと離れてくれない、すばらしいホラー小説だった。

 ああ、救いがないなあ……。
 うん、この読後感こそいいホラーの証ですねえ。
 それから、Interludeの一話目がものすごく大好き。これは惚れてしまう狂気ですね。
 エピローグの後なのに、さらに心を奪われてしまいました。
 未読の人はここまで早くたどり着いて、あの狂気を私と一緒に愛しましょう。ぜひ。

 いやー、最高でした!

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