最初の印象は「学生時代にこの作品に出会っていたら……!」
です。
タイムトリップものは数あれど、平安時代、それも貴族として扱われたら――
歴女なら誰しも願ってやまない展開が繰り広げられます。
初対面の男性は『~人目の攻略対象』、
会話をしたら『分岐イベント』、
好感触だったら『フラグ確保』
とオタク女子ならではの受け止め方で物語は進んでいきます。
そして作者略歴にある通り当時の社会情勢、風俗、服飾雑貨など仔細に描きつつ、ルビ(読みがな)もつけている丁寧な描写がストーリー展開に確かな輪郭を与えています。
各話のサブタイトルもラノベタイトルのようなこだわりぶり、
ラブコメは好きでも日本史は少し、いやかなり苦手という方にこそおすすめの作品。
「いづれの御時(おおんとき)にか、ファンタジー・ラブコメ
あまた さぶらひたまひけるなかに、
いとやむごとなき 際(きわ)にはあらぬが、
すぐれてときめきたまふありけり。」
ときまきます。
タイトルを拝読したときは、失礼ながら、「ああ、きっとこんな話だよねー」という、ある意味先を見透かしたような感覚で読み始めました。
でも、これってネガティブなことではなく、読者が期待するポイントがわかりやすいという点で、商業的に非常にポジティブだったりします。
むしろ、編集者はそういうものを作品の中から見つけることに苦心するものなので……。
で、本作ですが。
その期待にはしっかりと応えつつ、当時の風習や鎮魂のメカニズムなどをしっかりと展開に盛り込み、また恋愛もので大切な感情の動きも巧みに表現されていて。
非常に満足度高く、最後まで読ませていただきました。
編集視点で言うのであれば、物語構成に寄り道や脱線などを加えることで、読者の期待や感情を手玉にとる要素が加えられれば、より物語に惹きこめるのかなと思います。
今後も期待しております!