『人格移植』なんて言っても偽物作ってるだけ、という見方もあります。
でも人の本質は、人格(欲求の体系)やその基礎となる記憶ともいえます。また、福岡先生の動的平衡論のように、そもそも生物は代謝するので今日は昨日と別の人、流れに増えては消える渦巻の高級版にすぎぬとも思えます。個人的には、立派な墓より電脳自分を残したいということもありましょう。社会的にも、その人の人格が役立ち、さらに発展する可能性が与えられる。人工知能に代わられたくなければ、自分達がなるしかないとも考えられる。
ただ、公的制度(法律や規則の体系)となると『社会通念』に基づかねばなりませんので、徐々に移行してゆくことになるのかもしれません。認知症治療のため埋め込んだ補助電脳が改良され、人格部分も補完してゆく一方、脳細胞は減ってゆき、最後の1個が死んだ時に人権訴訟が起きるとか……。ならば、補助電子頭脳からお願いします( ←命根性汚い推進派 [笑] )。
あっ、でも遺伝子操作とかテロメア再生とか、もっと無理ない方法で電子頭脳並みの機能がもてたらその方がいいかも……。
『こんな軽薄な輩が片付くまでは、寿命克服技術なんて実用化できんな』って開発遅れちゃったらご免なさい(苦笑)。
まだ未完結なので、完結してから星を入れようかとも思いましたが、一話目が凄い出来だったのでついつい入れてしまいました。
こういう一気に読めて、ひっくり返すまでを高速でやってのける作品、大好きです。(二話目以降も期待しています)
------2016/10/09-----
ついに更新が完結。ということで、全体を通してのレビューを書いてみようかと思い立ちました。約半年前、一話目の面白さがすごいと書きましたが、後半の話はそれを上回る面白さです。
自分の中で一番きたのが「シュレディンガーのチョコ」でした。
これは是非読んでみて欲しいです。この短さでこの完成度、驚きます。
特に最後のシーンがいい。これね、再会したとか、今は結婚しているとか、そういうオチにしようと思えば出来たと思うんですよ。(2ch有名コピペみたいに!)でもそうじゃないんですよ。
書かないんです。
すっと最後まで持っていってそれで終わってしまう。
最初読んだ時はああ、悲しい終わり方なんだな。と思いました。ちょっとのすれ違いで、気持ちが通じることがなく時間が過ぎていく。なんとなく口調から、関係が進展しなかったことは伺えて。チョコを中々確かめてくれない時点で、他の方法に切り替えてこなかったと考えると、その子の気持は一時的な感情で、終わってしまったのかもしれない。
でも、成人式前の帰省なんですよね。ってことは、色々と想像が膨らむわけです。その子ともきっと会場で会うんだろうな。とか、どんな会話になるんだろうかな。とか。でもね、中学生の頃ですよ。今更言っても迷惑かもしれないし。だから、このまま胸の中にしまって開けなかったことにしてしまうのかな。とかも。
色々と考えてしまうわけです。たった数バイトの情報から想像が膨らむ。
こういう「書かない良さ」ってのが、この作品を物凄い完成度にしていると思うんですね。
最後を飾る「絵空事」も、なんとも言えない雰囲気があります。師匠との会話や、地の文の言い回しが凄い好きで、素直に「文章上手いなッ!」と思いました。
とにかく書く所と書かない所のセンスが爆発的に物凄い作品です。
『例えばこんな話』はこれで一旦完結だそうですが、次回作に大期待です。