圧巻のプロローグ――最高の戦記物語

今まで数々のミリタリー小説を読んできましたが、本作は他の追随を許さない至高の戦記小説です。

――近代日本が大東亜戦争(太平洋戦争)の時代に転移する――

という「ミリタリー小説に親しみのある人達」から見ればありふれた設定で始まる本作。
しかし、その内容は類を見ない緻密さと史実に基づいた圧倒的な情報量で構築された地盤の上で、凄まじいリアリティを以って躍動する兵器群と、圧巻の戦闘シーンが次々と描かれます。

兵士たちの葛藤
時代が求めたが故に作られた英雄の苦悩
国で帰りを待つ女性達の哀愁
同じ日本人でも、時代を違えた「近代日本人」と「大東亜戦争時代の日本人」であるが故に起きる違い……

これらを余すところなく極限に、仔細に、そして丁寧に描かれます。


これだけでも目を見張る完成度ですが、本作の魅力はここからです。

戦争の本質は《外交手段の一つである》という大前提から外れることなく「戦争を始める事」よりも『戦争を終わらせる事』の難しさを如実に読者に伝えてくる強烈なテーマが根底にあります。

ただただ銃火を交えて戦うだけが「闘い」ではなく、時には相手の政治模様や民意にもスポットを当てつつ進んでいくストーリーは、もはや「架空戦記」と呼ぶには違和感すら感じます。

私が知りうる限り、これは「Web小説最高の戦記小説」であると自信をもってお勧めしたい本作です。

「二度目の大東亜戦争」というタイトルに惹かれた貴方、その期待を遥かに上回る感動があります。是非、お読み下さい。


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