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概要
わたしの目から色が消えるまで、立てられる窯はあと三十五度
「赤から抜ける。次に緑。最後に青」
薬師はそう言って、わたしの手に湯呑みを握らせた。
三年。あと三年で、わたしの目から色が消えるという。
わたしは染師。
この町でただ一人、〈夜明けの色〉を出せる。
東が白んでから、日が縁を出るまでの四半刻。
満月の翌朝の引き潮でしか剥がせない緋苔を、冷えきった川の水で染める。
――だから窯は、年に十二度しか立たない。
わたしの目が残っているあいだに立てられる窯は、あと三十五度。
辻に貼り紙を出した。弟子をとります、と。
来たのは二人。
全部書き留めるのに、不器用な紺屋の四女。
字が書けないのに、手だけが速い苔取りの子。
「藍より、少し暗い」
――そう言って、通じたことが一度もない。
わたしは、自分の見たものを人に渡す言葉を、ひとつも持っていなかっ
薬師はそう言って、わたしの手に湯呑みを握らせた。
三年。あと三年で、わたしの目から色が消えるという。
わたしは染師。
この町でただ一人、〈夜明けの色〉を出せる。
東が白んでから、日が縁を出るまでの四半刻。
満月の翌朝の引き潮でしか剥がせない緋苔を、冷えきった川の水で染める。
――だから窯は、年に十二度しか立たない。
わたしの目が残っているあいだに立てられる窯は、あと三十五度。
辻に貼り紙を出した。弟子をとります、と。
来たのは二人。
全部書き留めるのに、不器用な紺屋の四女。
字が書けないのに、手だけが速い苔取りの子。
「藍より、少し暗い」
――そう言って、通じたことが一度もない。
わたしは、自分の見たものを人に渡す言葉を、ひとつも持っていなかっ
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