概要
死ぬはずだった、何度も。なのに、まだ息をしている。
森の奥で目を覚ましたとき、名前も、自分が何者かも思い出せなかった。覚えていたのは、幾度となく魔物に襲われ、その度に死に損なってきた感触だけ。爪は喉を裂くはずだった。それでも、何かがほんの少しだけ逸れる。理由のわからないまま、繰り返される死の手前で立ち尽くす日々。そこへ、行方知れずの父を探す一人の冒険者が迷い込んでくる。彼を庇い、確かに命を落としたはずの体が、何ごともなかったように起き上がる。「一緒に来てくれ」――差し出された手を取った瞬間、二度と開かないはずだった森に、見知らぬ道が伸びていた。死ねない何かが、人として歩き出す物語。