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概要
光より速く届いた死。戦争は、帳簿の上で始まっている。
死が届くまで、四十三分かかった。
木星圏。戦争は条約で飼い慣らされ、〈調整〉と呼ばれている。月ごとの戦死者数には上限が定められ、すべての死は証券化され、市場で決済される。戦域公証官ヨアルの仕事は、その死を一件ずつ「正規の損耗」として認定すること──いわば、戦争の会計士だ。
ある日、撃沈された艦の百十七人を公証していた彼は、一件の異常に気づく。八十五人目の死亡信号が、爆発の観測より十一分早く届いていた。あらゆる信号が光の速さでしか届かないはずの宙域で、その死だけが、光より速かった。
時計は無罪だった。つまらない説明は、すべて死んだ。残ったのは、この戦争の帳簿のいちばん深い場所にある答えだけ。
正しさで武装した敵と、反論できない数字。ぼくに残された武器は、署名ひとつ。
簿記化された戦争の底を覗く
木星圏。戦争は条約で飼い慣らされ、〈調整〉と呼ばれている。月ごとの戦死者数には上限が定められ、すべての死は証券化され、市場で決済される。戦域公証官ヨアルの仕事は、その死を一件ずつ「正規の損耗」として認定すること──いわば、戦争の会計士だ。
ある日、撃沈された艦の百十七人を公証していた彼は、一件の異常に気づく。八十五人目の死亡信号が、爆発の観測より十一分早く届いていた。あらゆる信号が光の速さでしか届かないはずの宙域で、その死だけが、光より速かった。
時計は無罪だった。つまらない説明は、すべて死んだ。残ったのは、この戦争の帳簿のいちばん深い場所にある答えだけ。
正しさで武装した敵と、反論できない数字。ぼくに残された武器は、署名ひとつ。
簿記化された戦争の底を覗く
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