登場人物それぞれが重く悲しい過去と向き合い、仲間の支えで前を向き、自分の生き方を見つけていく。
得てして重たくなりがちなテーマを、軽妙な会話とメリハリのついた展開でまとめあげて、非常に爽快な読後感を与えてくれます。
胸にグッサリ刺さるのに、刺したあとはしっかり絆創膏を貼ってくれる。そんな作品です。
また、滅茶苦茶強い主人公がただ単に俺TUEEEEしないのも本作の魅力の一つ。
力への葛藤や、不殺がテーマになっていて、これも書くの難しいのに凄いなと思います。
執筆難度が相当高いはずですが、読んでる間はそういう小難しさは感じません。テーマは重めですが、しっかり明示されているので、混乱する事もなく、サクサク読めて尚且つ面白いです。
涙腺緩むので注意。というより、緩ませたい方にオススメです。
体の内に異常な力を秘め、異能を外に発する少年は、父親から彼女しか解けないと言われる暗号を受け取った少女と共に、国の組織の1つに追われることとなる。
記憶力に優れた少年の、封印された記憶に眠る秘密とは?
少女に預けられた暗号を解読することによって得られる記録の秘密とは?
2つの秘密が交錯する時、少年少女の逃避行の先に現れる未来は果たして……。
スタートこそややスローリーだが、少年を狙った事故から一気にペースアップする。そこから始まる逃避行は、謎をふんだんに織り交ぜ、読者のページをめくる手を加速させる。
小中の謎を解明させながら進める展開によって、読者のストレスも溜めない秀逸作品。
是非1度お読みいただきたい。
ほんのりとアウトロー感が漂う、青年と少女の放浪記(と、なっていくものと思われる)。
決して楽な道を辿ってきた訳ではないからこそ、青年ナダの苦悩、ところかしこに散りばめられたその感情表現は切実で、精巧で、心に刺さる。
登場キャラクターは、皆どこか親しみを感じる現実味がありながら、とても個性豊か。賑わしいやり取りを見ているだけでもどこか楽しくなる。
そこへ蔓延る陰謀、忍び寄る追っ手。
刃の切っ先のような緊迫感は、ストーリーを決して安心できないものへと引き締める。
だからこそ、穏やかな時間、気の置けない親しい人たちとのやり取りが輝くのかもしれない。
この作品のミソは、現実とフィクションのバランスが絶妙であり、どこか読者に親しみを抱かせるところにあるように思う。
良い意味で不安定で、衝動的。
一風変わったSFだが、心を惹き付ける力作。