幼い頃、降りしきる雨のなかで何気なく歌を口ずさんだ。それに応えて、この世ならざる声が、手が、際限なく歌をもとめ、蹂躙した。まぎれもない恐怖体験をあじわいながらも、心のなかには、恐怖とはまた違う思いが燃え上がり始めていた……。本作の真の主役とは「歌」の魔力、「歌」の魔性であるのかも知れない。
『雨のうた』は、雨の日に歌ったことで “何か” に気に入られてしまった主人公が、以後ずっと雨の中で声を求められ続けるという怪異体験を描いた物語です 📚☔文章の美しさ、怪異の気味悪さ、主人公の心の変化――どれもが高いレベルでまとまっており、短編ながら強烈な読後感を残します 🌫️📖静かな筆致で進むのに、読めば読むほど背筋が冷たくなる――そんな上質なホラーが好きな方に強く刺さる一作です 😨🌧️
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(221文字)
梅雨。雨が降り続く日々。カラッとした晴天は望めぬ。高い湿度。しかし……身体を、頬を、なぞり落ちる水滴は雨粒には有り得ぬ粘性。動物の体液か。動物ならぬ何者かの何かか。人の想いは風通しが悪いと湿度を増して腐ります。人ならざる者なれば、尚更。人ならざる者に憑かれた人ならば、尚更。
捉えようによっては、大きく異なる二つの意味をもつ物語である。と感じました。一つは雨の日に現れる、得体の知れない怪異の物語。もう一つが、穿った見方なのかも知れませんが、才能や容姿が他の人よりも秀でている人間が、安易に商品化され、世界中にいる見えないカスタマーたちへの心の叫びを比喩した作品に読めました。ともすれば、オカルトと、人こわ(?)の二面性を隠し持つ作品である、と考察させていただきます。いずれにしても梅雨はまだ続きそうです。オカルトといえば遠部先生の、湿度のあるホラー。ご一読を。
雨の日の不快な湿度や、得体の知れない「アレ」に襲われる恐怖から始まりながら、最後はゾクゾクするような倒錯したカタルシスへと着地する、非常に完成度が高い。単に怪異に脅かされる被害者で終わるのではなく、「自分の声の価値」に気づいた瞬間から主人公の心理が狂気を帯びていく、その鮮やかな反転劇に魅了されました。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(110文字)
雨。子どもとも大人ともつかない年齢。そして、この世には存在しないもの。揺らいだ境界の中での経験に、影響を与えられる心。「魔境」という元々仏教に由来する言葉があります。修行中に現れる幻覚や異常体験、それに恍惚感や万能感などの修行の妨げになる精神状態だそうです。面白いことに芸術家などもそれに通ずるような体験が語られることがあります。ちょっとその心境が覗けちゃうホラーかな、と思いました!
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(104文字)
雨の日に歌を歌ってしまったあの日から、雨が降るたびに「何か」が耳元で歌をせがんでくる。ずっと、ずっと続く。それは、その地の禁忌を破ってしまった「罰」か、何かを歌で「魅」了してしまったが故か…どちらにせよ、要求は果てなく続く…
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