気配

Ash

 ども、読んでくれてありがとう。

 ちょっとした話なんだ。ほんの一分くらい、いいかな?


 最近さ、世の中が妙に物騒だと思わない?

 事故や災害なんて昔からあったけど、それだけじゃない。理由の見えない不幸が、じわじわ近づいてきてる気がする。


 誰かに恨まれる。

 そんな経験ある? いや、普通はないよね。

 でもね、恨みって理由の有無に関係なく唐突にやって来るんだ。


 例えば……あなた、SNSやってる?

 投稿の炎上、よく聞くよね。

 ほんの一言が誰かにとっての引き金になる。

 「政治がどうの」「あのアニメが好き」──それだけで叩かれる人がいる。


 小説投稿だって同じだよ。

 たまたま似たアイデアを書いただけで「盗作だ」って叫ばれる。

 本当に偶然でもね。

 一度火がつけば消せない。ただ叩きたい人にとって理屈なんて要らない。


 まあ、あなたは気をつけてるかもしれない。

 でも、個人情報とか本当に守れてる?


 自撮り。卒アル。免許証。

 そういう「写真」じゃなくても危険なんだ。

 窓ガラスやテレビの反射に映った横顔。

 その断片だけで、AIは繋げる。

 ネットに散らばる無数の「たまたまの写り込み」を拾い集めて、いつ、どこで、誰がいたかまで。


 ねえ、想像すると……首の後ろがひやっとしない?


 ああ、恨まれる心当たりがない?

 でもそれって、あんまり当てにならないよ。


 他人の恨みが偶然あなたに重なることだってある。

 全然関係のない誰かが、身を守るために偽の住所や特徴をネットに書き散らす。

 「ここに住んでる」「こんな顔だ」って。

 それが偶然、あなたに似ていたら?

 矛先は一瞬で替わる。

 ただの偶然が、致命的な現実になる。


 ねえ、外を歩いていて背後に気配を感じたことは?

 一度も? 本当に?


 外だけじゃないよ。

 セキュリティ完備のマンション? オートロック?

 ネットを探せば突破の方法なんていくらでも出てくる。

 鍵の脆さ。カメラの死角。

 昨日までの安全が、今日には裏切られる。


 それでも、生きていくしかない。

 外に出なきゃならないし、閉じこもることもできない。

 だから必要なのは──心構え。


 すぐ隣にある危険と、仲良くやっていく覚悟。

 それしかないんだ。


 ……ねえ、あなたならどうする?


 本当に。

 明日、もし誰かにつけられていたら?

 今日、もし鍵穴に触った跡を見つけたら?

 画面の中で誰かが、あなたの名前を叫んでいたら?


 あなたは、どうする?


 ――




 ……ごめん。

 今の問いは、あなたにしたんじゃない。




 ずっと、あなたの後ろに立っている人に聞いたんだ。



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気配 Ash @AshTapir

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