解毒　短歌連作12首

開いてみれば、
そこには日常の風景とはかけ離れた、
しかしなぜか心に引っかかる言葉の断片が
散りばめられていた。

まず驚かされるのは、
その言葉選びの奔放さ。

「朱夏の死海」

「神の隻眼か悪魔の隻眼か」

「トリックスター」

「クローンの土左衛門」


これらの言葉は、まるで作者の頭の中に渦巻く混沌をそのまま切り取ったかのようだ。
それは時に詩的であり、
時に荒唐無稽。

その不協和音こそが、
この歌集の最も強烈な魅力となっている。

特に心を揺さぶられたのは、
「うしろまえかな？と直せばうしろまえ、
つまり最初が正解だった」という一首。

これはまさに、人生の選択を前にして右往左往…続きを読む

死海・ケルベロス・鳳凰・原子炉といった異質な語彙が同じ地平で自由奔放に飛び交いながらも、共鳴している不思議な印象の連作のように感じました。

破滅や死の影が繰り返し現れる一方で、「ゲリラ豪雨の愛情」「ひまわりの泪」など切実な欲望や救済への希求も同時ににじんでいます。


荒唐さと痛切な祈りが同居し、
幻想的でありながら現実の焦燥を突きつける、
不穏でありながらも鮮烈な詩世界が

とても斬新だと感じました。