シアワセくらべ

狐守玲隠

第1話

いち、じゅう、ひゃく、せん、まん。

 フォロワー数一万。ああ、幸せ。

 ぴこん、ぴこん、ぴこん、ぴこん。

 鳴り止むことのない通知。ああ、幸せ。

 私は、美しい数字と心地よい通知音に恍惚とした。

 

 私の承認欲求を満たしてくれるものは、この数字と音だけであり、その他はない。

 また、人の存在価値を図るものは、というのも同義だと思う。

 この世は、所詮人気が全て。人気がないやつなんてしんじゃえばいいのに。


 午前二時を指す時計を横目に、特に目的もなく知らない誰かがあげた、どうでもいい投稿を次から次に流し見る。

 あまりのつまらなさに大きなあくびをすると、鼻から息が抜け、身体中に眠気が回った。

 

 もう飽きたし寝よ。


 アプリを閉じ、スマホの電源を落とそうとした時、ぴこん、通知がまた鳴った。

 寝ようと思ってはいても、睡眠欲求よりも承認欲求が強い私は、迷わず再びアプリを開いた。


 あなたの投稿に「おひさま」からコメントが送られました!

 ーーーー新着コメントーーーー

 おひさま:この人、かわいそう。幸せなのかな。


 見た瞬間、私の禍々しい感情がさっきまでの眠気に憑依し、それを毒気に変えた。

 

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シアワセくらべ 狐守玲隠 @Yuri1121komori

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