青い紫陽花
みらい
青い紫陽花
青い紫陽花の下には死体が埋まっているらしい。
この言葉は誰の本からだったか。「赤い桜の下には死体が埋まっている」と並んで有名な話だと思う。
作者や物語を置き去りにして独り歩きしてるこの言葉。
実は全くの嘘でもないらしい。紫陽花は生えてる土が酸性だと青色に、アルカリ性だと赤色に色が変わってしまうのだと何かで読んだ。そこから「心変わり」という花言葉が生まれた、とも。そして、人の死体は分解が進むと酸性を示すのだとか。だから人の死体の傍に生える紫陽花は本当に青くなるのかもしれない。
…でも、だからなんだという話だ。青色の紫陽花なんてそこら中にあるし、それら全部に死体が埋められていたらどれだけの人が殺されたんだってことになる。海外のことは知らないが、日本には酸性の土もアルカリ性の土もある。ある時期を境に土が酸性になっただとかいう話もどれだけあると思っているんだ。年によって紫陽花の色が変わるのだってよく聞く話じゃないか。だったらまだ、沢山ある桜の中で特別赤い一本が下に埋められた死体の血を吸っているという話の方が私にはすんなり信じられるかもしれない。
どうしてこんな言葉を思い出したんだったか。...あぁそうだ、私の家のそばで毎年赤い花を咲かせている紫陽花が初めて青い花を咲かせたからだ。ここら辺は人参を育てている家がたくさんあるアルカリ土壌の地域だから不思議に思ったんだ。硫黄肥料なんか撒いた覚えは無いけど。誰かが捨てていったんだろうか。嫌だな、私は赤い紫陽花の方が好きなんだが…。
…テレビの音がうるさいな。庭にいても聞こえるなんて相当だぞ。父さんにあとで文句を言おう。私がご近所さんに怒られるんだから。それにしても殺人事件なんて物騒だな。あいつ、人なんか殺すような奴じゃなかったのに。学校の休み時間ずっと花をいじってるのんびりした奴だったのに。私の家の紫陽花が好きだって最近も見に来てたな。それこそこの紫陽花の下に埋められてたりして。
……なんて、まさかな。
青い紫陽花 みらい @Mii_31
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