心奪われる和風ファンタジーの開幕

最後まで読み終えてからレビューするつもりだったのですが、嬉しいことにかなりの長編になりそうだし、第1部完(23話)でキリが良いので、いったん書きます。

序盤の印象を乱暴に表現すると、『もののけ姫』と『鬼滅の刃』を足して2で割り、そこにお米を加えた感じ(!?)というものでした。稲が敵の形状や生態のモチーフになっている点がまず面白いのですが、それが奇抜なワンアイデアではなく、しっかりした知識に基づいてデザインされているところが素晴らしく、興味深い。その稲獣たちに立ち向かう国家直属の精鋭部隊『刈人隊』の規則、隊服、その生地に至るまで、世界観が丁寧に構築されています。

そうした土台の上に王道の安定感があるアクション活劇が展開されていくのですが、語り手である作者さんの筆力がとても高い。冒頭2行を読むだけで、映像描写の精度と詩情に満ちた視点を感じ取れるはず。

『谷は焼け崩れ、斜面には刈人たちの亡骸が累々と転がっていた。川面には息絶えた者たちの影が無数に漂い、枝に引っかかった死体が吊るされるように揺れている。』(プロローグ)

また、特筆すべきはアクションシーン。
動作と反応を仔細に捉えているだけでなく、痺れるほどカッコいい。

『稲波は両手を交差させ、二振りを重ねて首を挟み、そのまま素早く外へと裂いた。首は胴を離れ、鈍い音を残して落ちる。間を置かず、両の首の付け根へ刃を沈めると、巨体は前のめりに沈み、稲の脚が膝を折って地を受けた。』(11話)

アニメにしたら、ものすごく『映える』はず。
ただ、僕は良い物語というものは決して映像作品の「部品」ではなく、それ自体が独自の映像を持っていると思っていて。この作品が大手スタジオによって超絶スペクタクル映像になったとしても、文字で読んだときに脳裏に浮かんだ光景の方がリッチかもしれません。この物語には、そういう豊かさがあります。
また、僕が感嘆したのは食事のシーン。

『木の器に粟と稗を軽くよそい、湯を注いでから刻んだ大根葉でかさを増やす。』(2話)

食事を支度する一文に、生活の苦しさやそれに対応する日々の工夫まで盛り込まれているのです。これは、作者さんの頭の中に物語世界や人物の明確なイメージがあり、考えて書くというより観察するように描いているからではないかと感じました。

と、ここまで世界観や文章について触れてきましたが。
単純に、話が面白いんですよね。
登場人物の心の動きを丁寧に追ってくれるし、刈人隊が登場してからは一気に場が華やかになって。無線的なものを使って刈人たちが稲獣へと殺到するシーン、強者感をもりもり出してくる新キャラたち、鳥肌が立つくらいテンションが上がりました。14話『食堂のふたり』みたいに、ちょっと息抜きのパートも人物が生き生きしていて楽しいです。個人的に、こういう回をもっとちょうだい! と思います。葉鳥さんはヒロイン枠に入ってくるのだろうか(俗な意見)。

第1部で一番好きなのは、主人公の姉である鈴芽さんが刈人たちと邂逅し、傘と草履を代理で売ってもらうエピソード。些細なことで尊厳が踏みにじられて鈴芽さんが内心で懊悩する姿が……こう……グッとくる! 幸せになって欲しい!! 

まだ第1部、ここからさらに面白さが加速していくと思いますので、続きを読むのが楽しみです。未読の方がいらしたら、ぜひ。
                            
最後に。作者さんの本業(?)を反映してか、ゲーム的な要素が散りばめられているのも見逃せません。人類の脅威に立ち向かう刈人隊という組織、稲獣の出現時間や形状(十二支モチーフ)の設定など、そのままシミュレーションゲームにできそうな造り。赤穂成がイベントで同時多発発生して、SSRの隊士が足りなくなって、モブ刈人まで使って拠点防衛戦とかをやるんだ、きっと……。

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