ジャンキーズクリスマス
鏖(みなごろし)
ジャンキーズクリスマス
俺は売人をしている。
何もかも全部うまくいかなくて
こんな仕事をしている。
最悪なのは
肝心の
ついつい
手を出してしまうことだ。
俺も立派な
ジャンキーになってしまった。
今はオピオイド系の
クスリが流行っているが、
俺はそれはごめんだ。
俺は70年代の連中のように
ヘロインしかやらない。
ダウナー系の代名詞だ。
それでヘロヘロになる。
雪が降っている。
俺は
通りに立っていた。
G-1のレザージャケットを着ても
寒さが沁みる。
いつもの常連がきた。
黒人の男で
クリスマスイブだからか、
ボランティアから、
ハンバーガーをいただいてきたらしい。
それを食いながら来た。
ヤツは金が少し足りない、と言った。
俺は色々考えたが、
今日はいいだろう。
クリスマスイブだ。
あり金を受け取り、
ヤツにヘロインを渡した。
それから、数分で、
自分の分を残し、全てをさばいた。
俺はアパートに帰ることにした。
すると、あの黒人の男が倒れていた。
口からハンバーガーを吐いていた。
喉にでも詰まらせんたんだろう。
大体、ジャンキーとアル中は食わないもんだ。
慣れないことをするとこうなる。
俺は男に近寄った。
死んでるようだ。
クスリをやる前に死んだようだな。
俺はヤツのコートのポケットをまさぐった。
あった。
俺はヘロインを取り出した。
すると、
男が、急にか細い声で喋り出した。
俺は多少驚いた。まだ生きていた。
男はこう言った。
「俺の友人が42ndストリートのグリーンヒルというアパート203号室にいるから、そのクスリをそいつに渡してくれないか?」
俺が答えを出す前に
ヤツは、言うこと言うと息絶えた。
雪が絶え間なく降る中、
俺はそこに向かった。
アパートのドアを叩くと、
男が出てきた。
あの男そっくりの男だった。
双子だろうか?
よく見ると松葉杖姿だ。
俺は事情を話し、その男に
ヘロインを渡した。
男は無表情で受け取った。
何度も言うが、今日は
クリスマスイブだ。
「メリークリスマス」と俺は言った。
「メリークリスマス」とその男も言った。
終。
追記
「ジャンキーズクリスマス」はウィリアムバロウズの短編の名作だ。雑誌のユリイカでバロウズの特集が組まれた時に読んだ。この小説はそのオマージュみたいなものだ。もうバロウズの「ジャンキーズクリスマス」はこの国では読むことはできないんじゃないのかな。
ジャンキーズクリスマス 鏖(みなごろし) @minagorohsi
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