概要
あなたの色に、染まりたいです。
渡井(わたらい)ゆずです。俳人・花山離水(はなやまりすい)先生のご指導のもとで俳句を始めて、三年目になります。応募した俳句の賞で、特別賞をいただけたのですけど……作品への講評には『才能は確かだが、師匠の影響を強く受けすぎてはいないか。リスペクトと模倣の違いを今一度理解してほしい』とあって。胸が苦しくなりました。
けれど……。
賞に応募したわたしの連作にはじめて目を通された離水先生が、あるところで急に顔を青ざめさせたこと。
「ゆず君、ひとつ答えてほしい。この句は、『あれ』を見て詠んだのか?」
書斎のほうを指さしながら、かすれた声でそう尋ねてこられたこと。
その日の稽古が途中で終わることになり、先生が屋敷の奥へ去っていかれたときの後ろ姿が、とっても小さく見えたこと。
それらのほう
けれど……。
賞に応募したわたしの連作にはじめて目を通された離水先生が、あるところで急に顔を青ざめさせたこと。
「ゆず君、ひとつ答えてほしい。この句は、『あれ』を見て詠んだのか?」
書斎のほうを指さしながら、かすれた声でそう尋ねてこられたこと。
その日の稽古が途中で終わることになり、先生が屋敷の奥へ去っていかれたときの後ろ姿が、とっても小さく見えたこと。
それらのほう
何かできればと思っております
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!愛に染まる――今、誰かを尊敬する人に、読んでもらいたい一作です。
師弟の影響と在り方を染物に掛け合わせた題――あいぞめ。
最終話を読んで、タイトルの意味が一つの輪に繋がる構成が見事である。
俳句をテーマにした文芸作品で珍しい舞台ではあるが、俳句に触れたことのない読者でも背景がすっと伝わってきて、描写に過不足がない。主人公の地の文の語り口が「ですます調」である点からも、句や専門用語に対して、過剰に説明的であるような違和感もなく、始終没入感を阻害せず、表現の技量を感じた。
尊敬する師の句に、自分の句が似てきてしまうリスペクトと模倣の違いーー
その一件をめぐる物語であるが、最終的に主人公が導き出した結論は俳人の師弟という枠を超え、先人が次世代に文化を継承し…続きを読む