概要
二人でくっついて眠る夜は、雨音だけが静かに響いていた。
雨が降る夜、終電帰りの俺の耳に、小さな声のSOSが聞こえた。
アパートの階段の下で、小さな仔猫が震えている。
周囲に親猫の姿はなく、俺は震える仔猫を連れて帰った。
タオルで濡れた体を拭いてやり、ドライヤーの優しい風で毛並みを整える。
すると、仔猫の毛は、わたあめのようにふわふわになった。
安心したのか、仔猫は俺のそばにぴったりと寄り添い、小さな喉をゴロゴロと鳴らした。
その姿は俺の疲れた心を癒す。
仔猫がソファーで寝ている間にシャワーを浴びて、これからのことを考える。
飼うか否か。
だが、俺が戻った時、事態は一変していた――。
これは、雨の日に一匹の猫を拾った男が、家族という奇跡を手に入れるまでの、優しくて少し切ない物語。