第7話【エピローグ(今)】──君へ

再び、本を手に取る。


 この物語は、あの頃の“君”に向けた贈り物。

 それは、図書室のあの文庫の背表紙と、君の名前が書かれた図書カードから始まった。


 もし、君がこのページをめくりながら、

 ふと「どこかで読んだことがある」と感じたなら──それは偶然じゃない。


 ページの角、三角に折られた跡。

 誰かがそっと指を置いた“しるし”。


 それは、君だけが気づくために、残されたものかもしれない。


     * * *


 あの日の夏、

 僕たちは同じ物語の風景を見ていた。


 でも、それを言葉にできず、胸にしまい込んだまま、大人になった。


 いまなら言える。

 君が先に借りたあの本を、僕が読んだこと──それが、僕の世界をどれだけ変えたか。


 そして、君がいたから、僕は物語を書けた。


 To the girl who once borrowed the book before me.


 ありがとう。

 君の“しるし”があったから、僕は今でも、物語を旅している。


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『海辺のしるし』 ふぁーぷる @s_araking

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