自然発生型人工ZOMBI

Kei

自然発生型人工ZOMBI

暴力は首都圏のどこかから始まった。

渋谷の交差点とも、新宿駅とも、証言が一致しない。

ともかく、あっという間に連鎖していった。

暴力を受けた者、目撃した者、少しの間をおいて次々と暴れだしたのだ。


何らかの病理かと思われた。

しかし、当局が暴徒を確保すると、誰彼構わず殺傷に及んでいた彼らは急に脱力し、放心した。生き生きと輝いていた目の光は途端に死んだのだった。


徹底的に検査をしても、一切の心身異常は見られなかった。

訳がわからないまま、しかし事態は収まることなく、暴力は徐々に広がっていった。



* * * * *



「あなた!隣の人が暴れてる… 早く逃げましょう! …ちょっと、何してるの?」


「この機に乗じて暴れるのさ。みなと同じようにな」


「あ…そうね」




金の多寡でしかない存在となったワレワレ。誰が?誰を?「誰」もいない。

承認されることのない、主体の不在。不安、不安定。

異常な暑さがスイッチとなった「だけ」だった。人々が壊れる準備はできていた。

要するに「頭がおかしくなった」のである。人災として。

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