第11話 初めての積み重ね
目の前にいる彼女の真剣な瞳が、静かに仁の心を揺さぶっていた。
「先に言われてしまったね」と照れ笑いし「ボクも葵ちゃんを忘れられなくて…会えなくなって気付いたんだ、キミの事が好きだと。キミみたいな若い子に惹かれるなんて、ボク自身驚いてる…」言葉にしてしまうと、心の奥にあった想いが一気にあふれそうで、仁は一瞬、視線を落とした。
「でも…ボク、36なんだ。葵ちゃんと歳が離れすぎてる」そう呟いた声は、どこか戸惑いと迷いが混ざっていた。
「年齢なんて…私気にしていません…五条さんの優しい笑顔や言葉に触れ、惹かれたんです」葵の声は震えていたが、真っ直ぐ仁を見つめていた。
「ボクでいいの?本当に?」「はい…五条さんがいいんです…」とやり取りをし、仁は実感が湧き、嬉しくて顔を赤らめたが急にハッとし「ボクのシアワセ細胞が分裂している!」と嬉しそうに笑った。
葵は「え?シアワセ細胞が分裂⁈何?それ?」と笑いながら突っ込むが、嬉しくて涙が溢れた。
二人は食事を終え店を後にした。
「葵ちゃん、遅くまで付き合わせてしまったね。明日も学校だろ、ボク車だから家まで送るよ」と仁は葵を気遣う。
その気持ちが嬉しくて「ありがとう、お願いします」と言い、そっと仁と手を繋いだ。彼女の手は小さく、少し震えていたが温かかった。
仁は葵の手を感じ、照れくさそうに言った。「あの、葵ちゃん…恋人繋ぎ、してもいいかな?」彼の声は少し震え、純粋な緊張が混じっていた。
「うん!」葵は頷き、仁の指と自分の指を絡ませた。恋人繋ぎの手の感触に、彼女の頬が赤くなった。「恋人繋ぎ…初めてなの…」葵は仁の顔を見上げ、照れながら「告白したのも、五条さんが初めてなんだ…」と笑った。
仁は葵の言葉に、愛しさが胸に溢れた。葵ちゃんの初めてをボクが…彼は照れながら、ギュッと手を握った。「ボク、葵ちゃんの初めての積み重ねをしていきたい…」彼の声は少し恥ずかしそうで、葵への誠実な愛が滲んでいた。
「葵ちゃん、ボクのこと、五条さんはやめて仁と呼んでほしいな…」と葵にお願いする。
「仁……仁さん……仁くん……仁くん!」と声を出して名前を呼ぶと、葵の顔がふわっと花が開くような笑顔になった。
仁は葵に見惚れ、「いいね!それでいこう!」と顔を赤らめる。
二人は手を繋いだまま、駐車場まで歩いていった。
珈琲と逍遥 なわふみ @nawa_fumi3
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。珈琲と逍遥の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます