概要
誰とでも話すのに、誰とも連まない。
そしていつもイヤホンをしていて、聴いている音楽は日替わり。
クラスメイトの東堂倫は、ちょっと変な人だ。
でも——気がつくと、目で追ってしまう。
音楽室の前で、扉の蝶番を直していた彼の姿を見かけた日から、私は『何もないはずの場所に、何かがある』と感じ始める。
ふざけてるようで、ちゃんと見てる。
聞き流してるようで、ちゃんと聴いてる。
——これは、眠っているふりの東堂くんと、私だけが知ってしまった『世界のほつれ』の話。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!知られざる日常の裏側――そこで戦う継承されし者
第9話までのレビュー。
授業中は寝てばかりなのに成績は平均ラインを保ち、授業中に当てられても無難に答える。そんな器用にサボる主人公・東堂倫はちょっと変な高校生だ。
誰とでも分け隔てなく話すのに、誰とも連むことはない。いつもイヤホンで聴いているのは日替わりの音楽。まるで日常の視界や音を遮ることで、目には見えない、耳では聞こえない異質な何かを鋭い感覚で捉えていく切り口が非常に巧い。
クラスメイトの六花はそんな彼を気にするようになり、目で追うようになる。たどり着いた先の音楽室。そしてある違和感に気づく。知られざる深淵の入口がすぐそこまで迫るような焦燥感――読者は背中を押されるようにいざなわれ、気…続きを読む - ★★★ Excellent!!!見えないものに気づいてしまったら——
“どこにでもいる眠たげな男子”と見せかけて、実はとんでもない秘密を抱えた主人公・東堂くんを中心に描かれる青春×オカルトストーリーです。
淡々とした日常の中に、ふと差し込まれる異質な闇や風。
「なんだったの?」と不安になる描写が巧みで、気づけば読者もヒロイン・六花と同じように東堂くんを目で追ってしまいます。
彼の掴みどころのないキャラも、この物語の大きな魅力です。
見えないものとの遭遇などホラー味を含みつつも、会話のテンポや東堂くんの飄々とした性格が柔らかくしてくれるため、怖さよりも“ワクワクする不思議”が残ります。
六花がどんな風に物語へ関わっていくのか。
気になる伏線がさりげなく散…続きを読む - ★★★ Excellent!!!彼の背中には、もう一つの世界がある
教室の隅で眠る少年。
授業には興味なさそうに見えて、呼ばれれば答え、誰とでも話し、誰にも踏み込ませない。
掴みどころのない彼、東堂倫を「ちょっと変なやつ」と呼んだ少女・篠原六花は、ふとしたきっかけで彼の『裏側』に触れる。
蝶番を締め直す、放課後の音楽室。
ただの道具箱、何気ない仕草、無害そうな言葉。
そのすべてが、ほんのわずかに『ズレて』いた。
ひらいた扉の向こうに吹いた風。
ありえないほどの冷気と闇。
そして、その現象を、あくまでも「日常」の顔でごまかそうとする彼の目。
――この物語は、『普通』の皮をかぶった異常の中で、静かに交わされる問いかけだ。