第9話までのレビュー。
授業中は寝てばかりなのに成績は平均ラインを保ち、授業中に当てられても無難に答える。そんな器用にサボる主人公・東堂倫はちょっと変な高校生だ。
誰とでも分け隔てなく話すのに、誰とも連むことはない。いつもイヤホンで聴いているのは日替わりの音楽。まるで日常の視界や音を遮ることで、目には見えない、耳では聞こえない異質な何かを鋭い感覚で捉えていく切り口が非常に巧い。
クラスメイトの六花はそんな彼を気にするようになり、目で追うようになる。たどり着いた先の音楽室。そしてある違和感に気づく。知られざる深淵の入口がすぐそこまで迫るような焦燥感――読者は背中を押されるようにいざなわれ、気づけば没入していくから要注意だ。
彼のセリフが何とも物々しくて魅力的に映る。
長く使ってると、モノには魂が宿る……と含み口。
「見えないものって、時々自分から見せに来たりするから」
「俺が行くまで絶対扉開けないでね」
彼の意味深なセリフの数々、これらの演出が何とも憎い。
何もないはずの場所に何かがある――現実と虚構の世界の境界線が次第に溶けてなくなっていく感覚。
受け継がれた力の秘密と混ざり合う奇妙な体感がすぐそばに。
知られざる深淵を覗かせる学園ミステリーは始まったばかり。
あなたの目には何が映る?
“どこにでもいる眠たげな男子”と見せかけて、実はとんでもない秘密を抱えた主人公・東堂くんを中心に描かれる青春×オカルトストーリーです。
淡々とした日常の中に、ふと差し込まれる異質な闇や風。
「なんだったの?」と不安になる描写が巧みで、気づけば読者もヒロイン・六花と同じように東堂くんを目で追ってしまいます。
彼の掴みどころのないキャラも、この物語の大きな魅力です。
見えないものとの遭遇などホラー味を含みつつも、会話のテンポや東堂くんの飄々とした性格が柔らかくしてくれるため、怖さよりも“ワクワクする不思議”が残ります。
六花がどんな風に物語へ関わっていくのか。
気になる伏線がさりげなく散りばめられていて、一度読み始めたら続きを追わずにはいられません。
——あなたもきっと、いつの間にか東堂くんの秘密を覗きたくなっています。
教室の隅で眠る少年。
授業には興味なさそうに見えて、呼ばれれば答え、誰とでも話し、誰にも踏み込ませない。
掴みどころのない彼、東堂倫を「ちょっと変なやつ」と呼んだ少女・篠原六花は、ふとしたきっかけで彼の『裏側』に触れる。
蝶番を締め直す、放課後の音楽室。
ただの道具箱、何気ない仕草、無害そうな言葉。
そのすべてが、ほんのわずかに『ズレて』いた。
ひらいた扉の向こうに吹いた風。
ありえないほどの冷気と闇。
そして、その現象を、あくまでも「日常」の顔でごまかそうとする彼の目。
――この物語は、『普通』の皮をかぶった異常の中で、静かに交わされる問いかけだ。