あーしとシマしまスイカ様🍉

夢月みつき

本文「あーしとシマしまスイカ様🍉」

 あーしの名前は神楽屋かぐらやむむ! ソバージュの金髪の髪、小麦色の肌、派手めなメイク、夏仕様の水色ネイルアートも超イケてるっしょ? 制服を着崩し街を闊歩する。

 あーしはヒトから「ギャル」と呼ばれてる。



 初夏に差し掛かり、これから、夏休み、あーしの季節と息巻いていたら学校ガッコのセンセーにとある村に自由研究に行ってくれと頼まれた。

 そこは奇妙な風習のある村で、「スイカ様」と呼ばれるご神体を祀っているそうなんだ。



「へえ、面白そうじゃん。村で、のんびりくつろげそ~」

 と、のんきに考えていた、この時はまだ知らなかったんだ。

 その村が、因習村いんしゅうむらと呼ばれる村だと気づいたのは、後のことだった。



 あーしが村に足を踏み入れたのは、その日の夕方だった。

 予約を取った民泊の家に行く途中に、いくつもの西瓜すいかばたけを見かけた。

 ふと、瑞々しい西瓜が食べたくなる。



「ふふふ、家に着いたら、西瓜出してくれっかな?」

 

 あーしは、そんなことを考えながら、足取りも軽やかに宿泊する、かやぶき屋根の民家に急いだ。



 ここは宿泊する家、あーしが到着すると、優しそうなお爺さんとお婆さんが近づいて来た。


「おじーちゃん、おばーちゃん、あーしは神楽屋むむです。短い間だけど、よっしく!」


「あんたが神楽屋むむさんかね。わけえ娘さんが、来るのは久しぶりだなあ。なあ、婆さん」


「ほんにのう、孫が帰って来たみたいで嬉しいな、くつろいでくださいね。むむちゃん」


「よろしくお願いします」




 ◇■◇■◇




「神楽屋むむ」挿絵

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818792437480714797




 あーしはその夜、くつろぎながら、美味い西瓜と、山の幸をふんだんに使った料理を食べた。

 夕食が終わった頃、部屋でスマホをしようとした、あーしに、お爺さんが来て、話しかけて来た。


「むむさんや、ゆっくり出来ているかの?」


「うん、マジ感謝っ! ゆっくり出来たし、美味い山の幸料理や西瓜もチョー美味うまかったです!」


「そりゃ良かった…それと今夜は朝までゆっくり、休んでな。夜中に起きても絶対、外に出ちゃならんぞ?」と、お爺さんに渋い表情をして忠告された。



「どーして? まぁ、外には出ないけど、トイレが庭にあるから…」

 あーしが言いかけると、お爺さんはこう言った。


「今夜はスイカ様が練り歩く夜なんじゃ、もしもの為にこれを渡しとくよ。スイカ様に出遭ってしまったら、こいつを投げるといい」


 そう言うと、お爺さんは瓶に入った。塩を渡してくれた。



「――塩? スイカに出遭うってどーいうことよ?」

 

 あーしが不思議がって、首をかしげると、お爺さんは心配そうに「くれぐれも気をつけてな」と言い置き、自室へと戻って行った。




 ◇■◇■◇




 深夜、3時、あーしはトイレに行きたくて、起きるとトイレがある庭の方に歩いて行った。トイレを済まして、のどが渇いたから、冷たい麦茶を貰おうと家の方に戻ろうとした。


 その時、外から、楽器を鳴らすような不思議な音と甲高い声が聞こえて来た。


 どんどん、ティン、どんどん、チンチン。


『すいすいっとスイスイッ』


「なんなん? あの音と声は、村のヒトが酔っぱらって歩いているのかな?」

 

 むむは、高まる好奇心が止められなかったが、お爺さんの忠告を思い出し、貰った塩の瓶をポケットにいれると門の所から外を恐る恐る覗いてみた。

 

 すると、そこには村中の西瓜畑から来た無数の西瓜と、それらを引きつれている一際ひときわでっかい西瓜が歩いていた。

 


 その西瓜には、目と鼻と口の部分にそれらしい穴が開いていて、丸い目玉がキロキロと動いている。


「あっ…!」

 

 あーしは、びっくりして思わず声が漏れてしまった。

 その瞬間、奇妙な音と声を発していた西瓜達は一斉に、こちらを向いて向かって来たんだ。


 あーしは、スイカ様と西瓜達に取り囲まれてしまった。むむ大ピンチ!


『すいすいっ、スイスイっと』


「あんたがスイカ様ア? ギャル舐めんなよッ!」



 ――その三十分後――


 むむの周りに人だかりが出来ていた。

 なんと、むむがスイカ様を脇に抱えながら、デコピンを繰り返していた。

 

 ザワザワ…


「なんと、スイカ様が…あのような少女に」


罰当ばちあたりな」


 家から慌てて、お爺さんとお婆さんも出て来た。


 お爺さんは、むむに心配して近づくと、こう話しかけた。


「むっ、むむさん、大丈夫か? それはスイカ様じゃぞっ」

 それに気がついた、むむは、お爺さんに、にかっと歯を見せて天真爛漫に笑い掛ける。


「あっ、おじーちゃん! もう、こいつら、ヒトを襲わないって。あーしと約束してくれたんだあ!」


「どういうことなんじゃ? 訳を話してくれんか」

 

 お爺さんがスイカ様を恐れ震えながら、聞くと、むむはこう言った。


「あのねえ、このスイカ様って、収穫前に痛んで食べて貰えなかったスイカが、化けたモノなんだってさ。寂しかったらしいよ? でも、ヒトを襲うのは良くないって、あーしが説得したから、もうダイジョーブ!」


「そうなのか…それはスイカ様も難儀なんぎじゃったな。」


「でしょ~? だから、痛む前に早めに収穫して、加工したりもして欲しいってさ。スイカ様と西瓜達のそれが、願いなんだって!」


「分かった。出来る限り気をつけるよ」




 村人がまたざわつき始めている。


「あのスイカ様を救ったギャル…すげえ」


「むむちゃん、パねえ!」


「おお、救世主様…」




 何だか、あーしはこの村で有名になっちった。サイキョ―・ギャル、楽屋ぐらやむむ!ここに爆誕ッ!!チェキラッ☆

 おじーちゃんも、おばーちゃんも喜んでくれたし、一件落着っしょ!



「さてと、そろそろ帰るかな~」


 あーしは、次の朝、お土産をいっぱい貰って、おじーちゃんとおばーちゃん、村人達に見送られて都会に帰って来た。



 ◇■◇■◇



 夏休みも終わり、登校日に学校に行くとセンセ―が、すごく驚いた顔をしていた。


「なっ、おっ、お前ッ…!」


 どうやら、あーしが酷い目に遭って、泣いて帰ってくるのを楽しみにしていたらしい。


「ぷんぷん激おこ~! これでも食らえ!」


「おわっ!」


  あーしは、用意していた水風船を、センセ―に思いきり、投げつけて服をびしょ濡れにしてやった。



「ハッ、ざまぁ!」

 

 こうして、あーしと因習村の自由研究は終わって、おかげで賞も取り学年一位になった。



 終わり





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 最後までお読みいただきありがとうございました。

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