港より境界を彷徨う

埠頭から追いかけていたヒコーキは空の高みに霞む 見送る


灼熱の日差しと湯のなか身を沈め 汗の額を海風が撫でる


風波にたゆたう透明そして赤 光追いかけるビー玉の瞳


あの頃と同じキラキラ波間から雲に近づいてく飛び上がっては


潮の匂い椰子の実の香と混ざり合い見渡す丘に百合影の散る


生と死をすべて生んで黙すから穏やかに寄せる波に何故と問う


数理満つ山川海空風さえも 今は遠神とほかみ 歌は術ならず


今星は個々の運命さだめをよく照らす 小さき心を掬う歌の世


灰白に照り返す青稲の刃 湿風しとかぜ戦慄わななき雷雲迎う

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揺らぎ /【ナツガタリ25】カクヨム短歌賞一首部門参加作品 森野きさ @kisamorino

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