棒がこねぇ

白川津 中々

◾️

毎日テトリスをやっている。

手の平サイズのキーホルダーでプレイできる、あれだ。実家に帰省した際、子供時分に上級生からパクったものが部屋から出てきたので軽い気持ちで始めてみるとどうにも止まらなくなってしまい持ち帰ったのだが一向にやめ時が分からず、朝も夜も関係なくひたすら落下と消滅を繰り返しているのである。この単純作業をなぜ終わらせられないのか。報酬が出るわけでもないしなんなら仕事にも支障をきたしている。連日連夜のテトリス疲れでミスが頻出。今季のボーナスは確実カットであるからして、さっさと飽きてしまいたいのに気がついたら電源を入れてプレイしているのだ。コロベイニキが耳にこびりついて離れず、ずっと頭の中でパッシブにリピートされる地獄。これはパクった上級生の呪いではないかとあらぬ妄想も差し込まれる始末である。精神科への診察も考えたがテトリスがやめられないなどと言うのはさすがに恥が勝ち実行できていないこの状況。せめて、なにか生産性のある事をしたい。


「……そうだ!」


思い立った俺は撮影用カメラなどの機材を注文し配送されたタイミングで配信を開始。現在、ひたすらテトリスだけをライブで流しているのであった。


来訪者はほぼないし、仮にきたとしてもノータッチである。テトリスをやっているんだから構っている暇はない。しかし、その中で一つ、気になるコメントがあった。


“それ俺のテトリスじゃね?"


冗談のつもりで投稿されたものだと思うが、このコメントがテトリスをパクった上級生だったらどうしようと不安が過った。あれから数十年。盗まれたテトリスを未だに覚えているとしたら随分執念深いものだ。


俺はそっとユーザーをブロックし、今日もテトリミノを落とし、消滅させていく。パクったテトリスから流れる短音のコロベイニキを聴きながら……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

棒がこねぇ 白川津 中々 @taka1212384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ