感情ではなく熟慮を――理性的な対話へ

 このエッセイは、穏やかな語り口で、令和を生きる私たち一人ひとりにそっと問いかけてくれます。社会参加の意味や、自由と責任のつながり、ことばの力と危うさ、そして歴史や文化という土壌を丁寧に耕すことの大切さ……どのエピソードにも、まっすぐで誠実なまなざしが感じられました。

 なかでも、「政治的な話」と「党派的な話」をきちんと区別できる理性的な社会への願いが心に残ります。声を荒らげるのではなく、静かで確かな意志で綴られているからこそ、やさしく届くのだと思います。

 感情をあおらず、心の奥にゆっくり沁みていく文章の力で、「ほんの少しの想像力」が未来を変えるかもしれない──そんな灯りを、静かにともしてくれることでしょう。

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