まだ名前のない想いに、触れた気がして

 タイトルに込められた「未登録感情」の余白が胸を打ちます。『Echo』は、ただのSFではなく、喪失と再生を繰り返す心の記憶の物語。

 特に、砂の感触と砕けた巻貝が蘇らせる“いのり”の救命、その描写の繊細さに胸が締め付けられました。研究対象として扱われながらもなお、人を想う心を失わない“心弦”のまっすぐさに、読者としても自然と寄り添ってしまいます。
 
 いのりの「好きと言ってほしい」という手紙の一節も、乙女らしさと哀しさが滲んでいて印象的。緊迫の中にふと差し込まれる家族の優しさ、兄妹としての再生の抱擁には、涙腺が刺激されました。

 静かに迫る試練の影に、次章への不安と期待が高まります。

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