曖昧さを愛する哲学的ドラマへの招待状

 西之園上実 様の『意味+無意味は0。そこに現象を足して意識で引けば=『  』』は、日常の片隅で「意味」や「正義」といった哲学的な問いが静かに息づく、唯一無二の青春群像劇です。美濃口園の温かな空気、むっくんや雷禅さん、結風さんらの鋭くもどこかユーモラスなやり取り、そして秋埜教授との対話――それらが、日常のふとした瞬間に「生きている実感」をもたらしてくれます。

 この物語は、「曖昧さ」や「矛盾」を否定せず、むしろそこに宿る人間らしさをそっとすくい上げてくれます。正義や勇気、責任といった大きな言葉の正体を、現実の出来事や登場人物の心の揺らぎを通してじっくりと照らし出していく過程には、読むたびに新たな発見があります。

 独特の距離感と温もり、日常の中に潜む“意味”を探す旅。“哲学”の種を蒔いてみたい方に、ぜひ味わってほしい物語となっております。