都市伝説の裏側(個人の感想です)

黒河 かな

第1話  首を探す男


 皆さんは、『首を探す男』の話を知っていますか?

 この話を、誰かに聞いてしまうと『実際にその男が首を探しに訪れる』という、とんでもないお話で、しかも話を聞くだけでなくこうして文章で伝えても、その日かその翌日の夜には現れる、というものでした。


 今でいう『デュラハン』とか、『首無しライダー』とは全く違う、別のものと認識してもらった方がいいと思います。


 その『男』が現れたのは、今からもう25年以上も前の話。

 その当時、自分――わたしは派遣会社に籍を置く、工場で働いている怖いもの好きのある意味ボッチでした(実際にそうだったのだから、何も言えない)


 その日は丁度休み(シフトの関係で、平日休みになることも多かった)で、部屋をシェアしていた隣人は夕方からの出勤で、そのアパートの部屋にはわたししかいませんでした。まぁ、話などするような間柄ではないので、

 「今日は隣人は夜勤かー」

くらいの感じだったと思います。


 その話を目にしたのは、単なる偶然でした。

 その頃わたしは、初めて手にした携帯で色んな怖い話を見るのを楽しみにしていまして、その話も多分どこかのサイトを覗いて見たのだと思うのです。

 そして、その『首を探す男』という話を目にして、ちょっと怖いくらいに読み進めていたのです。


 その話は、ある所に住んでいた男が、大きなバイクを乗り回して近所に迷惑をかけていたから、その近隣の住民によって仕掛けられたワイヤーに引っ掛かり、首を飛ばされて亡くなってしまった。しかし、その首はどこに飛んでしまったのか見付けられず、結局首のない遺体として処理されてしまった(ヘルメットの中にもなかった)

 いつの頃からか、その男が首を探して彷徨っているという噂が出始め、この話を聞いたあなたの元に、その男が現れるだろう――、といった感じに纏められてました。


 さて、その話は創作だろうと思って眠りについたわたし。

 朝も早かったのでさっさと寝ることにして――、寝てしまった訳です。

 しかし、夜更けに『カタン』という音がして目が覚め、隣人が帰って来たのかとしばらくぼんやりとして窓を見ておりました。

 当時住んでいた部屋は、3人で3部屋をシェアする、というもので、わたしは窓際の部屋、隣人はその隣の部屋、そしてもう1人は玄関側の部屋と分けて使ってましてね? 私の部屋の窓は明かり採りの窓がガラスの上部に取り付けられている部屋で、まぁそんな所から泥棒は入って来ないだろうと、時折網戸にしていたのです。


 その明かり採り――というのが正しいのかどうかはさておき――は、その日閉めていた記憶がありますし、カーテンも引いていたのですが、そのカーテンが、

 『ジャラッ』

と開いたと思ったら、窓が『カタン』って開きましてね。

 「ぬーっ」

といった感じで、棒状になった『誰か』が入り込んできたのです。


 もちろん、部屋は1階とはいえベランダはありますし、窓だって結構高い位置にあります。それなのに、棒状の黒い影なんて入れるわけがないじゃないですか。

 そもそも、何も支えがないのに『棒状』で入ること自体がおかしいのです。

 しかも、後で気付いたんですけど、その人には首――というか、頭がなかったんですよね。


 「ひぇっ!」

っていう、多分小さな声で何事もなかったかのように部屋は静まり返りましたけど、後で確認したらカーテンは開いていないし、窓もきっちり閉まっていました。鍵も掛かってましたし、誰も入る隙間などなかったのです。


 その日はもう眠れなくて、隣人が帰ってくるのを心待ちにしてましたよ。


 それでですね。

 後日談なんですけど、怖い話をして欲しいと息子に頼まれて、そういえばこんな話があったよと、サイトを探してみたのですけど、どこにもそんな話はなくて。

 『首を探す男』で調べてみても、何も出てこないのです。『デュラハン』とか、『首無しライダー』とか、そういった話は出てくるのですけど、わたしが見ていたサイトはどこにもなく、また『首を探す男』の話も存在しておらず。


 あの話は、一体何だったのだろうと思っています。


 誰か、同じような体験をした人はいませんか?











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

都市伝説の裏側(個人の感想です) 黒河 かな @riguka_na

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ