船と肉と藻の湧いたワインと

異国の海を漂う海賊船ジョリー号。物資は尽き、船員たちはやせ細り、酒と病と狂気が静かに船内を蝕んでいく。
整備班の下っ端・カッスは後悔と疲労の渦中にあり、日々、壊れゆく船と、壊れゆく同僚たちに囲まれながら、腐敗した日常をやり過ごしている。
中でも特異な存在、薄笑いを絶やさぬキースと、「私はビョーキじゃない」と繰り返す女・リマ。彼らとの不条理な会話と奇怪な生活が、現実と幻想の境界を曖昧にし、カッス自身の理性を削り取っていく。
満身創痍の彼が選ぶのは、沈没か、逃走か、感染か、それとも同化か——。
絶望の海を漂う船上で繰り広げられる、無意味と暴力の果てにある“静かな地獄”を描いた黙示録的漂流譚。